ハイランドモルトの銘酒が生まれる里へ

 スコットランドといえばウイスキー。ハイランド、ローランド、キャンベルタウン、アイラの各地域には、100を超すモルトウイスキーの蒸留所がある。なかでも、北部のハイランド地域は蒸留所の密集地帯。スコットランド人の心の故郷ともいわれる美しい風景の中には、伝統を守り、ひたむきにウイスキーを造り続ける小さな蒸留所が点在している。

スコッチウイスキーが生まれるのは、スコットランドの原風景の中。

 訪れたのは、グラスゴーから車で北に40分ほどの場所に位置する「グレンゴイン」。スコットランドで最も有名なハイランドモルトのブランドのひとつだが、仕込みにかかわる従業員は数十人と規模は小さい。

1833年創業のグレンゴイン蒸留所。自然に溶け込むような建物は、一見すると工場とは思えないほど美しい。

 この蒸留所の特徴は、ピート(泥炭)を焚き込まないモルト作りと、じっくりと時間をかけて作る丁寧な蒸留法だ。スコットランドでは、麦芽を乾燥させる際にピートを焚いて香りづけをするのが一般的。だが、グレンゴイン蒸留所ではピート処理をせず、蒸留と樽での熟成に時間をかけることで、麦芽そのものの味が楽しめるウイスキーに仕上げている。ウイスキー初心者でも「おいしい」と思って飲めるのは、こうしたすっきりとした飲み口のウイスキーだろう。スモーキー感がなく上品な味わいで、日本食にも合うウイスキーとも言われている。

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2014.05.04(日)
文・撮影=芹澤和美