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エンケンさんの魅力は怖い系の役だけではおさまりません

 何しろドラマ内で“ワニ顔総理”とハッキリ呼ばれ、公式のインスタグラム内では【ワニ顔総理by民王Ⓡ】エフェクトまで作られてしまい、ワニワニと連呼されてしまうほど、迫力のある顔面がエンケンさんの大きな特徴のひとつ。

 出演していた『ドクターⅩ~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)でも、しょっちゅう大門未知子(米倉涼子)から「顔怖いよ?」と言われていたような。

 過去にはそのこわもてを最大限に活かした、ヤクザや殺し屋役を多く演じてきました。『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系)で演じた羽沢組若頭の氷高はシャープでカッコよく、初主演作となった『湯けむりスナイパー』(テレ東系)の、元殺し屋の源さんは、うらぶれた渋さにあふれていました。

 また殺し屋などではありませんが、個人的に推したいのが映画『クライマーズ・ハイ』で演じていた、新聞社の社会部長・等々力庸平。時代を感じさせるメガネ姿で横暴で嫌味な新聞記者を演じ、話し方なども含めて、こういう新聞社の人本当にいそう、と感心したものです(実際筆者の友人の親族に新聞記者がいて、「あのエンケンさんはその人にそっくり」と言っていました)。

 ですが、エンケンさんの魅力は怖い系の役だけではおさまりませんでした。

 膨大な数のドラマや映画に出演しているのでひとつひとつは紹介しきれませんが、例えば『スキャンダル』(TBS系)で演じた吹石一恵の年の離れた夫役は、いつになく軽いノリの美容整形外科医で新鮮だったし、『ドクターⅩ~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)で演じた、上司の蛭間院長(西田敏行)に絶対服従の海老名 敬役は、「御意!」の言葉と共にエンケンさんの挙動不審な様子の面白さを知らしめました。

 役によって軽みも出るし、とぼけた可愛らしさも感じさせるのは、やはり演技力の高さの賜物だと思います。

 そして個人的に忘れられないのが、2008年のドラマ『白い春』(フジテレビ系)で演じた、パン屋の店主・村上康史。

 血のつながらない女の子を懸命に育てている、一見ぶっきらぼうで不器用な男の役なのですが、それまでのエンケンさんの演じてきたこわもてを活かす役とまったく違い、市井の普通に働いて生きている男性の、静の魅力に満ちていました。

 女の子の実の父親、佐倉春男(阿部 寛)に、初めは冷たく当たりながらも徐々に親交を深めていく姿も説得力がありました。

 それだけ幅広い役柄を演じてきたからこそ、『民王Ⓡ』での、毎話誰か別の人を演じる役も説得力が高いし面白いのだと思います。

 他にどんな人と入れ替わるのか、楽しみながら見たいと思います!

『民王Ⓡ Inspired by 池井戸潤

毎週火曜21時00分放送(テレビ朝日系)
https://www.tv-asahi.co.jp/tamiou/
Instagram @tamioudrama

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2024.11.16(土)
文=斎藤真知子