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 こんにちは、“おじさん俳優”推しのドラマウォッチャー・斎藤真知子です。

 秋ドラマも概ね出そろいましたね。ですが“おじさん俳優”が一度に大勢出る作品はなく(そうしょっちゅうあるわけないのですが)、勝手に若干寂しいシーズン。とはいえ、もちろん“おじさん俳優”の出演がゼロというわけではありません。

 今回も、この演技とキャラクターは見逃せない、見逃したくない! というおじさんキャラと、演じる俳優たちを3名厳選してご紹介します。

 ちなみに、このコーナーでは“おじさん俳優”を、40歳以上と定義してます。


◆『民王Ⓡ Inspired by 池井戸潤』の遠藤憲一

若い女子から5歳児まで!? 遠藤憲一さんの(貴重な)七変化を見逃すな!

 2015年に放送された『民王』から9年の時を経てリターン、と話題の『民王Ⓡ』(テレビ朝日系)。

 前作は池井戸 潤氏の原作で、現職総理大臣・武藤泰山(遠藤憲一)とおバカな息子・武藤 翔(菅田将暉)の心と体が入れ替わるという前代未聞のシチュエーションを、おかしく温かく描いて熱烈なファンを生み出しました。

 おバカで漢字が苦手、マイペースな息子になりきった遠藤さんはもちろん爆笑させてくれ、大ブレイクぎりぎり前夜の菅田将暉さんの総理役(というか武藤泰山を演じる遠藤憲一さん役)も、同じくこの作品で人気が急上昇した高橋一生さんの、何事にも冷静な総理の秘書役も、すべてがおかしくて最高の作品でした。

 で、今回の続編ですが、今回は池井戸氏の原作にインスパイアされた、という形でのオリジナル作品。

 しかも前作は息子との入れ替わりだけだったのに、今回は入れ替わる可能性のある対象は国民全員!? という設定で、どうなるんだろう? と一抹の不安も抱きながら見始めたのですが……、面白い! そしてエンケンさん(以下この呼び方で失礼します)の演技の幅の広さに、改めて感動しています。

 第一話では、新たに登場した秘書・冴島優佳(あのちゃん)と入れ替わりました。

 エンケンさんは、あのちゃんのやや舌ったらずな喋り方をしっかり再現(彼女自身は秘書役で普段よりしっかり、滑舌もよく話していますが)。内股でちょこちょこ歩き、本来のイメージとはほど遠い“若い女子”役をきっちり表現したのです。

 また第二話では、“無理ゲー”な人生を諦めきっている若い男子・木下直樹(曽田陵介)と入れ替わり。猫背で覇気のない若者になりきりました。

 そうやって入れ替わることで、現代の民の心、本音を体感し、知っていくのです。

 さらに第三話では、な、なんと5歳児と入れ替わり! 喋り方はもちろんですが、目の前にいるのがアメリカ大統領だろうとおもちゃで一緒に遊びだしてしまう様子や、不安で周りにいる大人の服をつかんでいる様子、突然「抱っこ~」と言い出す様子などなど、子供特有の動きを表現して、爆笑させてくれました。

 それもこれも、エンケンさんのこわもてとのギャップが大きいから面白いのです。

2024.11.16(土)
文=斎藤真知子