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日本で暮らすパンダは1年半で半減

 リーリーとシンシンが検疫後に公開されるかどうかは、現状では分かりません。昨年、和歌山県のアドベンチャーワールドから30歳で中国に戻ったオスの永明(現在32歳)は非公開です。中国では、永明のような高齢のパンダは、なるべく負担をかけないように非公開とすることが珍しくありません。

 リーリーとシンシンは19歳で、パンダの高齢期(おおむね20歳)に差し掛かる段階。しかも健康上の理由による帰国です。2頭とも昨年9月から高血圧の症状が確認され、職員は降圧剤の投与を続けています。リーリーは2022年から時おり嘔吐もしていて、今年4月にはCT検査などを受けました(参照「パンダの健康管理方法はまるで人間?」)。

 東京都と中国野生動物保護協会が専門家を交えて協議した結果、元気で、問題なく輸送できるうちに帰国させ、生まれ育った環境で治療することが望ましいとの結論に。両者によるパンダの保護研究の協力協定は2026年2月20日が期限なので、1年以上早い帰国となりました。

 上野動物園の福田豊園長は9月29日(日)、リーリーとシンシンを同園から送り出した直後の会見で、「2 頭が生まれ育った環境で、これから穏やかに暮らしてほしいと思います。長年、リーリーとシンシンをあたたかく見守っていただいた皆様に心より感謝を申し上げます」と語りました。

 リーリーとシンシンが帰国したので、現在、日本で暮らすパンダは6頭(アドベンチャーワールド4頭、上野動物園2頭)です。昨年2月20日時点では13頭(アドベンチャーワールド7頭、上野動物園5頭、神戸市立王子動物園1頭)だったので、およそ1年半で半数以下となりました。

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中川 美帆 (なかがわ みほ)

パンダジャーナリスト。早稲田大学教育学部卒。毎日新聞出版「週刊エコノミスト」などの記者を経て、ジャイアントパンダに関わる各分野の専門家に取材している。訪れたパンダの飼育地は、日本(4カ所)、中国本土(12カ所)、香港、マカオ、台湾、韓国、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、カナダ(2カ所)、アメリカ(4カ所)、メキシコ、ベルギー、スペイン、オーストリア、ドイツ、フランス、オランダ、イギリス、フィンランド、デンマーク、ロシア。近著に『パンダワールド We love PANDA』(大和書房)がある。
@nakagawamihoo

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2024.10.06(日)
文=中川美帆