この記事の連載
- 小林涼子インタビュー前篇
- 小林涼子インタビュー後篇
大きな反響があった2024年度前期の朝ドラ「虎に翼」で、日本初の女性弁護士のひとりとなったヒロイン寅子の先輩・久保田聡子を演じた小林涼子さん。彼女は俳優業をしながら、循環型農園の運営やアート事業などを手掛ける会社「AGRIKO(アグリコ)」の社長という顔も持っています。
俳優として、自分に個性がないのではいかと悩んでいた小林さんが、会社経営という顔を持つようになって起きた変化とは。
» 【後篇を読む】朝ドラ出演、会社経営…「生真面目な長女っぽさ」に悩んだことも。小林涼子の軽やかな素顔
これまでは悲しい思いを抱える役が多かった
――「虎に翼」で演じた久保田先輩という役について、いま振り返っての心境はいかがですか?
小林 オーディションを受けたときは、伊藤沙莉さんが主演で、初めて法曹界に入った女性が主人公の話ですということは知っていたのですが、私がどんな役を演じるのかは知らない状態でした。受かった後に、どんな役を演じるのかを知ったのですが、久保田先輩のような役は、自分のやってきたキャリアの中ではあまりやったことのない役でした。私が今まで演じてきた役は、死んでしまうとか、悲しい思いを抱える役が多かったので(笑)、自分がこの役かと意外ではありました。
――これまでにない役を演じるにあたって、どんな準備をされましたか?
小林 最初のうちは、女性として日本で初めて弁護士になった久保田先輩という人がスーパーヒーローのような人なのかと思っていたので、なかなか人間味を掴むことが難しいなと思っていたんです。準備としては、当時、女性は法律の職業に就くことすらできなかった時代を切り開き、第一線で活躍をした方たちの本を読んだりしました。
出演者の方たちとみんなで、明治大学で法律の考証の授業も受けました。『虎に翼』に関わるまでは、法律を意識したことってあまりなかったんですけど、一個人として日本に住んでいる者として、改めて法律とは何かということを考える時間になりました。
――法律の授業を受けて、改めて気付いたことはありますか?
小林 法律って正解が決まっているわけではなくて、解釈や咀嚼をしていくものなんだなってことを知りました。そして、それを登場人物たちは学んでいくわけですけど、オーディションを受けていた頃は、遠い存在に思えていた久保田先輩という役についても、初年度は試験に合格できなかったり、そのことで悩んだり迷ったりしながら進んでいるんだと思うと、人間味も見えてきて、少しずつ人となりがわかって。彼女のことを大好きになりました。凄い人なので、さしでがましいかもと思いつつ、少しだけ久保田先輩が自分にも似ているんじゃないかという気もしてきて、演じることが楽しくなりました。
2024.11.29(金)
文=西森路代
撮影=佐藤 亘
ヘアメイク=髙 千沙都