フェイラーと聞けば、黒地に花模様のハンカチを思い出す人が多いのではないでしょうか。驚くことなかれ、実はいま、お馴染みのふわふわとしたシュニール織はそのままに、イチゴや動物に絵画、時にはラーメンにお寿司まで、あっと驚く可愛さと遊び心を持つ柄をリリースしています。
SNSではファンたちが次々と“推し”柄をアピールしてバズったり、ポップアップを開くたび長い行列が話題になったりしています。
多くの人々を魅了する秘密が知りたくて、社長の八木直久さんを訪ねました。ブーム再来のきっかけや秘訣、ブランドが描く未来などを紐解きます。
一つの商品が完成するまでに約1年半かかる
――まずはフェイラーのシグネチャーであるシュニール織について教えてください。
シュニール(Chenille)とは、フランス語で「(蚕などの)いも虫」の意味で、プクプクとした質感がシュニール織に使われるモール糸に似ていることから、そう呼ばれるようになったといわれています。
1本のふわふわの糸を作るためだけに、まず平織りをして細くカット、さらに高速スピンをかける必要があります。フェイラーのシュニール織の特長は、触れると気持ちがほっとするような、柔らかで厚みのある質感ですが、それは、これら一連の流れを経て実現されるんです。
柄はプリントではなく、どの柄も18色の先染めの糸を使って織り上げていくのがルール。機械でやっていますが、最後の仕上げは手を使っています。なので、同じ柄のハンカチでも、実は1枚1枚絵柄が微妙に異なるんです。
ホーエンベルクというドイツの小さな街で、とても時間のかかる過程を踏んでいるので大量生産はできません。デザインが決まってから商品が発売されるまで1年半かかります。
2024.10.02(水)
文=渡部かおり
撮影=榎本麻美