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 将棋の世界を漫画にしているさくらはな。さんのインタビュー。#2では女流棋士とはどんな存在なのか、そして増加中の女性将棋ファンについて聞いてみた。


――さくらはな。さん(以下さくらさん)が連載している「山口恵梨子(えりりん)の女流棋士の日々」は女流棋士にスポットを当てています。棋士と女流棋士は違うものなのですか。

さくらはな。(以下さくら) 戦う舞台が別です。棋士とは別に女流棋士だけのタイトル戦が8つあり、棋士がタイトルを目指して対局を重ねるように女流棋士も違う舞台で対局しています。ここ数年で白玲戦という大きなタイトル戦が新しくできて、女流棋士の対局数が大きく増えました。そんないきさつも漫画に描いています。女流棋士は女性しかなれませんけれど、棋士に女性がなることはできて、奨励会(棋士の養成機関)に女性会員はいますし(100名以上の奨励会員のうち現在女性は1名のみ)男性と同じように奨励会三段リーグで上位2人に入れば女流棋士ではなく棋士になることもできます。ただ、今までに女性が棋士になったことは一度もないのです。

女流棋士になるのは棋士と別ルート

――女流棋士になるには奨励会ではない別の道があるということでしょうか。

さくら そうです。奨励会を目指す子が多数在籍する研修会という組織が別にあり、そこはF~A(それぞれ1と2があり、C2よりC1が上)にクラス分けされています。奨励会と同じように勝ち数によりクラスが上がり、今は研修会B1クラスに昇級すれば、女流棋士の資格を得ることができます。山口恵梨子先生が女流棋士になった16年前は女子だけを集めた女流育成会という組織があり、山口先生はそこで1位になって女流棋士になりました。女性の奨励会員が途中で退会した場合でも、その段級に合った女流棋士になる道もありますし、女流棋士になる条件は時代とともに変わり、複数の方法があります。

――将棋を指す女の子が少ないため、棋士とは別に女流棋士というプロの世界が用意されているということなのでしょうか。

さくら 女の子も増えてはいるのですけど、確かに子どものときから将棋を指す女性は少ないです。レベルも男性ばかりの棋士と女流棋士では大きく違うと言われているのですが、女流棋士の対局数が増えた分、実力も上がっていくのではないかと山口先生から聞きました。

 女流棋士のごく一部の強い人には、棋士の棋戦に出て男性棋士と戦う機会もあります。そこで女流棋士が勝つことが増えてきました。女流トップの西山朋佳女流三冠は、棋士との公式戦で13勝7敗という既定の勝ち星(10勝以上、勝率6割5分以上)をあげ、棋士編入試験の資格を得て受験することになったんです。それは大注目で私もとても楽しみです。

2024.09.21(土)
文=宮田聖子
撮影=松本輝一