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映画ならではの表現を話し合い、物語の深みが増した

――監督と話した中で印象に残っているシーンがあれば教えてください。

 ラストシーンですね。原作にあるエピソードが映画では省かれている部分もたくさんありますし、原作にはなくても映画で作っているものもありますから、映画は原作とは別物なんですよね。だから映画ならではの表現をラストシーンでしたほうがいいのではと話し合いました。最終的な桃子の決断について、可能性は提示されても、実際には決断の結果を見せなくてもいいのかなと私は思いました。

――映画では結末が明示されない形になっていますね。

 音楽を手がけた岩代太郎さんのアイデアで足音が聞こえるシーンが追加されたことも含めて、どのようにでも取れる終わり方なんだなと。

――それは映画を観る人にとっても、何をどうするかは自身で自由に選択できる、というイメージにつながるかもしれないですね。

 そうですね。

――役作りや演技について、桃子の夫・真守役の小泉孝太郎さんや真守の母・照子役の風吹ジュンさんとはどのような話をされたのでしょうか。

 小泉さんとはたわいない話をよくしていました。風吹さんは映画のことを深く考えてくださって、そのアイデアで脚本にないシーンが追加されています。桃子が床下に入り、あるものを拾い上げるシーンです。そのシーンが入ることで印象がぜんぜん変わりましたし、映画全体の深みが大きく増しました。

――共演者の方々とのエピソードがもしありましたら教えてください。

 小泉さんや風吹さんとはたくさん話をしました。作品についてどうしていこうか、というお話もすごく充実していましたし、仕事をしていない時、普段の日々の過ごし方について聞かせてもらったのも楽しかったですね。

2024.08.29(木)
文=あつた美希
写真=山元茂樹