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 2024年夏までの出演映画は『ブルーピリオド』『お母さんが一緒』などすでに5本、さらにドラマや舞台など幅広く活躍している俳優・江口のりこさん。8月30日(金)に公開される『愛に乱暴』では、主人公の桃子役として、夫や姑との関係や次第にすれ違う理想と現実の中で心が揺らいでいく女性を演じている。

 本作の森ガキ監督は江口さんについて、「桃子はユーモラスな演技と真面目な演技、両方できる人がいいと思いました。しかも江口さんはヨーロッパ的な香りがする。手脚が長いので、フィルムに写したときに、世界に通用すると確信させる魅力がある」と賞賛。じわじわと追い詰められていくかのような主人公の心情をどのように表現したのか。混迷してゆく大人の女性の心理を生々しく映すこの映画にどのように向き合ったのか、江口さんに話を聞いた。

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原作も脚本も面白くて「これはやりたい」と思った

――映画『愛に乱暴』では、喪失や悲しみ、大人の女性の居場所といった内容に強く染みるものがありました。この映画の出演オファーが来たとき、どのように感じられましたか?

 監督が森ガキさんと聞いたとき、以前にドラマとCMでご一緒したことがありましたので、またご一緒できるのが嬉しかったです。それに吉田修一さんの原作小説を読んだ時、「めちゃくちゃ面白いな」と。脚本も魅力的だったので、これはやりたいなと思いました。

――江口さんの演じる主人公・初瀬桃子は、結婚8年になる主婦。結婚を機に会社を退職し、カルチャーセンターの講師を細々としています。郊外にある義母の暮らす家の敷地内にある離れで夫と2人暮らし、子どもはいません。桃子という人物についてどのように感じましたか?

 桃子は同年代の女性なら誰でも共感できる人物だと思います。原作には映画以上に桃子が関わる登場人物が多く登場し、面白いキャラクターの女性たちもいろいろいて、桃子という人間像もより深掘りされていましたし、全体としてとても興味深い作品だと思いました。

――役作りはどのようにされたのでしょうか。森ガキ監督は撮影前に下準備しつつ、現場で仕上げていく感じだったとお話されていますね。

 やっぱり現場に入ってやってみないとわからないんですよね。役作りについては、いつも現場で出来上がっていきます。監督とは撮影の中盤以降からよくお話をしていましたね。

――現場ではアイデアを提案されることも多かったと伺っています。それは普段からそうなのでしょうか。

 それほどはないです。今回は撮影現場で、「どうする?」「この人はどこへ行くのか?」という話が自然に出てきました。自分からこうしたい、ああしたい、というのではなく、迷った時にみんなで話をしていました。

――撮影現場でのさまざまな対話により、作品が練り上げられていったのですね。

 そうなんです。原作を映画の脚本に落とし込んでいくなかで、登場人物もエピソードもだいぶそぎ落とされてシンプルになっています。その中で彼女をどう見せていくかがとても難しくて。桃子という人物を撮影現場で演じていく中で、自然と桃子の人間像についてキャストやスタッフみんなで話し合うようになっていきました。

2024.08.29(木)
文=あつた美希
写真=山元茂樹