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 現在、フジテレビの月9ドラマ『海のはじまり』に月岡大和役で出演し、7月には自身初の写真集『HANA-UTA』も発売、2024年の下半期も待機作が多数控える人気俳優の木戸大聖さん。

 自身初・アニメーション作品への出演となった8月30日公開の映画『きみの色』では、鈴川紗由さん&髙石あかりさんとともにトリプル主演を務め、音楽好きの少年・影平ルイをみずみずしく表現した。

 木戸さんへのインタビュー前篇では、初挑戦となった声優業の面白み、やりがい、こだわった点など、たっぷりと語ってもらった。


声優の“才”を感じさせるエピソード

――様々な作品に引っ張りだこの木戸さんです。『きみの色』では声優業へ初挑戦となりましたが、出演の経緯から教えてくれますか?

 『きみの色』で僕が演じたルイは、オーディションでいただいた役なんです。山田(尚子)監督の作品は以前から観ていて、すごく素敵だなと思っていました。『映画 聲の形』は特に好きですし、「平家物語」なども観ていましたね。どの作品においても、キャラクターがとにかくかわいいですし、それでいて登場人物がそれぞれ葛藤していたり、悩みを持っていたりしているところも魅力的だと思っていたんです。

 そんな山田監督が最新作を作る、しかもそのオーディションのお話が自分にくるなんて、「オーディションを受ける権利があるんだ!」とワクワクしました。受かったと聞いたときは、本当にうれしかったです。

――オーディションの内容は、どのような感じだったのですか? 俳優業とはまた違いますよね。

 そうですね。最初は、指定された課題台本のルイの台詞を読ませてもらいました。事務所の会議室で、スマホの機能を使って録音しました。その次は実際の録音ブースに行き、大体各役二人ずつでペアを変えながら、山田監督の絵を見て声をあてていくというオーディションスタイルでした。

――その後、合格となったと。いざ本番に臨むときには、山田監督からリクエストなどもありましたか?

 オーディションの段階で、山田監督からルイのイメージを伝えていただいていました。監督は「ゴールデンレトリバーのような、やさしい大型犬のイメージで」とおっしゃっていて。自分としても「なるほどなあ」とわかりやすいものだったので、僕の思う大型犬のイメージをそのまま出させてもらいました。

――実際スムーズにその感覚は出せたと?

 実は……ものすごくスムーズだったんです……! 「こんなにすぐ録りきってしまうんだ!?」と思うくらいに。もちろん監督がOKを出してくださっていますけど、本当に実感もないまま、それくらいあっという間の収録でした。

――木戸さん、とても優秀だったんですね!

 いえ、決してそういうわけじゃないと思います! もともと声優業をされている先輩から、現場に入る前にアドバイスをいただいたんです。「監督がOKを出したあと、自分の中で“もうちょっとこういう風に言えたかな……”と思ったとしても、もう1回やったところでそこまで変化はないよ。だから監督のOKを信じてね」と。

 そのアドバイスを念頭に置いて、山田監督のOKを信じてとにかく演じていました。

2024.08.29(木)
文=赤山恭子
撮影=山元茂樹
ヘアメイク=速水昭仁
スタイリスト=田中トモコ