CREA WEBをご覧の皆様、SYOと申します。2022年も連載「映画ライターSYOの深掘りポップカルチャー」をどうぞ宜しくお願いいたします。2021年10月掲載の『イカゲーム』ぶりと間が空いてしまいましたが……、今年はコンスタントに、かつより濃いコラムをお届けできるように精進いたします!
アニメ好き大絶賛の『平家物語』高評価のわけは?
2021年の9月から動画配信サービス「FOD」で先行配信中だったアニメ『平家物語』が、2022年1月12日からフジテレビ「+Ultra」枠でテレビ放送中。NetflixやAmazon Prime Videoといった各種動画配信サービスでも配信されている。
この「+Ultra」は、2018年に開設された深夜アニメ枠。フジテレビの深夜アニメ枠といえば言わずと知れた「ノイタミナ」があったが、そちらが国内に向けたコンテンツを重点的にラインナップするのに対し、「+Ultra」ではよりグローバル展開を意識した作品を放送・配信するという。確かに『キャロル&チューズデイ』や『BEASTARS』など、日本だけでなく海外でも受け入れられそうなテイストの作品が多い。
『怪 〜ayakashi〜』『モノノ怪』『源氏物語千年紀 Genji』といった作品を手掛けてきたノイタミナではなく、海外視野を持つ枠の中で『平家物語』を届けるということ。これまでの「+Ultra」の作品と比較しても異色であり、「どういった作品になるのだろう?」と個人的に制作発表時から興味をひかれていた。
なにせ「平家物語」である。僕の「平家物語」とのファースト・コンタクトは小泉八雲の『耳なし芳一』だったが(小学生で『ゲゲゲの鬼太郎』にハマる→怪談に拡大→『耳なし芳一』に辿り着くという流れ)、日本の歴史がある程度頭に入っていないと、すんなり理解することは難しいコンテンツだ。
端的に考えるならば、海外の王朝もの・宮廷もののようになるべく外向けな「日本の歴史を知らなくてもわかりやすい」物語にするのでは、という予測をしていたのだが、完成した本編を鑑賞して感じたのは、「わかりやすさ」はもとより、現代的な味付けが多々施されているということ。
同時に、あしらいや画作りの部分には、日本の伝統美と最新のアニメ演出が組み合わされており、なるほどと唸らされた。つまり、本作は単に「海外向け」なのではなく、国内の歴史ものに対する知識や興味関心が薄い世代全般にとっても「ノレる」作品なのだ。そういった意味においても、実に画期的かつ意義深い傑作といえるだろう。
「平家物語」を史上初めてテレビアニメ化した本作に施された、現代的な味付け。本稿では、その点を中心に語っていきたい。
2022.02.20(日)
文=SYO