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山田監督作品への愛を熱弁!

――収録が始まる前は「ワクワク:不安」で言うと、どちらの要素が大きかったのですか?

 どちらかというと、不安のほうが大きかったです。もちろんワクワクはあるんですけど、これまで自分もアニメを見てきて「声優さんはすごい」と肌で感じていたので、はたしてそんな偉業が自分にできるのかという不安がありました。山田監督やスタッフさんが時間をかけて一生懸命作り上げてきた作品で、僕がキャラクターに声という形で魂を吹き込むという責任感もすごくありましたし。そこでダメにしてはいけないという気持ちがあったので。

――山田監督作品がもともと好きだったとのことですが、『きみの色』については、特にどこに魅力を感じましたか?

 人が色で見えるというトツ子、美しい色を放つきみ、僕が演じたルイの3人が主人公のお話なんです。彼らがそれぞれ持っている好きなことややりたい気持ちと、その先にある現実の悩みに葛藤する部分の共感性が、すごく面白いと思いました。

 台本は言葉だけなので、(画の)仕上がりがどんな印象になるかは想像もつかなかったんです。ですが完成した作品を観たら、山田監督ならではの色彩豊かな感じが素晴らしくて!! トツ子から見るきみ、ルイの色が“青”や“緑”という単語で表現するにはもったいないくらいキレイな色なので、そこがこの作品のとても大きな魅力、見どころかなと思います。

――色彩は本当に美しくうっとりしますよね。それに匹敵するくらい、音楽がまた主役を担っているようにも感じました。

 はい! 牛尾(憲輔)さんが作った音楽、僕も大好きです。特にライブのシーンは、キャッチーでテンポ感もよく、思わず口ずさんでしまうくらい。あの3人が作った曲なので、決して「プロみたいにかっこいい音楽」ではないというのが、すごくかわいらしかったりしますよね。これも山田監督のこだわりだと伺ったので、ぜひ劇場の大きなスクリーンで観てもらいたいです。

――演じたルイについては、木戸さんはどういう性格の男の子だと思っていましたか?

 とってもやさしくて、物静かで、音楽が大好きで、好きなことにはどんどんハマっていって、思わずテンションも上がってしまうような男の子。トツ子やきみからしたら、ルイのふんわりした感じが居心地いいんだろうなって、すごく思いました。

――普段はフラットだけど好きなものを語る熱量がすごいというギャップは、声入れのときにも意識していましたか? 非常に難しそうです。

 普段はちょっとお兄ちゃんなイメージで、好きなことを熱弁するときは急に少年に戻る感じなのかなと、僕の中では思っていたんです。最初「このくらいかな?」と思って声をあてていたんですが、興奮が表現しきれず、声と絵が分離してしまっていて。アニメーションのルイのテンションに追い付いていないと思ったので、普段お芝居しているときよりも、もっともっと大きな表現で見せていかないと足らないなと。そうしたことは演じながら気づきましたし、普段のお芝居とはまた違うアプローチで演じさせてもらいました。

2024.08.29(木)
文=赤山恭子
撮影=山元茂樹
ヘアメイク=速水昭仁
スタイリスト=田中トモコ