一度食べたらやみつきになる素朴なケーキ

 面積18平方キロメートル余り、人口10万人に満たない兵庫県芦屋市。山の手地区は大正期に開発され、大阪湾を見渡す風光明媚な高級住宅地として有名になりました。近年、芦屋市を訪れる女性達のお目当ては「スイーツ」です。街を歩いていて気がつくのは、スイーツショップの多さ。1969年創業のアンリ・シャルパンティエの本店もこの街にあり、華やかなウインドー・ディスプレイのお店もいっぱい。

小麦粉やバターを使わないおからケーキ。

 そんな街で、週1日、金曜日だけ開くのが、おからケーキの店『芦屋 善国』。国道43号線より南の住宅街にあります。芸術品のようなケーキがあふれる中で、地味で素朴なケーキですが、一度食べたらやみつきになる極上のおいしさなんです。

外観。住宅街にとけこんだ優しい雰囲気。
オーナーの中村玲さん。

「子供連れでママ友が家に遊びに来る時、持って来てくれるのがケーキなんですが、添加物も気になるし、こだわりの素材を使っていても、バターや生クリームなど、脂質がほとんど。砂糖もたくさん入っている。体にいいお菓子を子供達に食べさせたくて、自分で焼くようになったんです」と、中村玲さん。元々、お料理が大好きだったとか。「安心して子供に食べさせられるケーキ、子供達が喜んで食べるお菓子を工夫していきました」。

 中村さんが注目したのが、おからでした。「食物繊維たっぷりで体にいいのに、子供達はおからを食べない。お菓子にしたら食べるんじゃないかと思って」。でも、なかなか完成には至らず、何回も失敗したそう。砂糖ひとつとっても、甜菜糖、きび砂糖、和三盆、黒糖など、色々試しては試食を繰り返します。最終的にはコクが出る三温糖に落ち着きました。「甘いものを摂り過ぎると、キレやすい子になると思って。食べるものは、おやつも含めてとても大切だと思うんです」。

焼き立てのおからケーキ。プレーン 1本 880円

 完成したおからケーキを近所で開催された1DAYショップで販売したら、「おいしかった!」と思った以上の反響があり、「また、買いたい」というリピーターも現れました。「少しずつでも欲しい方に買いに来てもらえたら」と工房を造り、2011年3月から週1日のお店をスタート。

「お料理もお菓子も、作り手の気がこもると思うから、いつも、元気で、明るく、幸せな気分でケーキを作っています」とにっこり。

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2014.03.23(日)
文・撮影=そおだよおこ