すうっと溶けて、ほわっと風味がおいかける極上のわらびもち
開店前から行列ができて、すぐに売り切れてしまうわらびもちの店、京都『茶洛』。「もっとたくさん作ってほしい」という声も多いのですが、そうはいきません。その理由は、ご主人・関川元彦さんがていねいに手作りしており、1日にできる個数が限られているから。すっかり有名になった今も変わらず、ご主人ひとりが作ったものだけを販売しています。
阪神淡路大震災までは、有名旅館などに卸すだけだったわらびもち。ぷるぷるとしていて、楊枝や箸でつまみ上げられる限界の柔らかさ。口に入れると、まぶした抹茶やきなこの風味とほのかな甘みを残して溶けてしまう程はかない食感。一度食べただけでやみつきになって、一時は西陣織で知られる西陣の一角、鞍馬口通の住宅街の小さなお店に、頻繁に買いに行ったものでした。
その『茶洛』さんが、2012年9月に今出川通大宮西入ルに移転。バス停に近い便利な場所で、うんと行きやすくなりました。さらに、春秋の観光シーズンと夏以外なら、行列も少なくて比較的買いやすい。寒い冬、温かい部屋で熱いお茶と共にいただくわらびもちも、なかなかオツなものです。ちなみに、わらびもちは夏のものという季節感をなくしたのは『茶洛』さんかもしれません。それほど、飽きがこず一年中いただきたくなる風雅なおいしさなのです。
新しい店舗は格子戸が美しい町家。京都の町並みに溶け込んでいます。店内では、以前と変わらず、関川さんがわらびもちを切り分けては抹茶やきなこを目の前でまぶしていました。
右:外観と違わず趣のある店内
『茶洛』のわらびもちは、関川さんが工夫を重ねたオリジナル。わらび粉で作るむっちりした食感のものとは全く違います。「繊細で、箱に入れる、そのタイミングだけで食感が変わります。とびきりの箱入り娘なんですよ」と関川さんはにっこり。
「菓子屋で修業したことはありません。もともと柔らかい食感が好きだったので、口の中ですうっと溶けて後口に風味がくるよう、ぎりぎりまで柔らかくしてみたんです。柔らかいけれども、ある段階でコシがでるように仕上げるのは、勘です」。
2014.01.26(日)