この記事の連載
- 【上野動物園】パンダの暮らし#1
- 【上野動物園】パンダの暮らし#2
シンシンの「パンダ団子」の量を減らす
リーリーと同い年で18歳のメスのシンシン(真真)は、昨年9月に血圧が高めだと判明しました(参照:上野動物園のパンダ「シンシン」体調不良で公開お休み中…近況を動物園に確認。再開の予定はいつ?)。ただし、パンダの血圧測定では、人間のようにきちんとした数値を測れるわけではありません。
「かなりブレが生じるので、あくまで全体的な傾向を把握するという形です。しかも、パンダの血圧に関する研究は多くありません。台湾の台北市立動物園が研究成果として、上は140~160程度が正常範囲ではないかと発表しており、それを参考の一つとしています」(冨田さん)。
こうした前提に基づきますが、シンシンの血圧は200を超えたこともあります。そのため上野動物園は、昨年9月からシンシンの高血圧の改善に向けたさまざまな取り組みを続けています。
例えば、薬は中国の専門家と相談しながら量を調整して投与。血圧は定期的に測定しています。
副食の「パンダ団子」を与える量は、通常なら1日約600グラムですが、シンシンは約400グラムに減らしています。また、パンダ団子には卵を混ぜますが、シンシンの分だけ卵の黄身を抜いて作っています。黄身がパンダの高血圧に影響するかは明らかになっていませんが、念のため抜くことにしました。ちなみに上野動物園ではかつて、砂糖と塩も入れていましたが、現在はシンシンに限らず、どのパンダのパンダ団子にも入れていません。
高血圧の明確な原因は、今のところ判明していません。ただ、「運動は大事だと中国の専門家から助言されているので、なるべく運動させたいなと思います」(冨田さん)。シンシンが過ごす屋外は、公開エリアと非公開エリアを自由に行き来できるようにしています。シンシンが非公開エリアにいる間は観覧できませんが、シンシンのためなのです。気温の上昇などにより、シンシンが室内にいる間も非公開となります。
こうした取り組みの甲斐もあってか、シンシンの血圧はじわじわと下がり、安定してきています。常に140~160の間というわけではなく、全体の傾向としてはやや高めながらも、最近は200を超える値は出ていません。
リーリーに対しては、シンシンより少し後の昨年10月から血圧測定を始め、昨年11月28日から薬を投与しています。リーリーの血圧は140~160より高いものの、シンシンほど高くはなく、200を超えることはめったにありません。そのため、降圧剤(こうあつざい)は低用量から使用しています。
2024.06.22(土)
文・写真=中川美帆