そう考えると、トランプ前大統領の選挙に向けての快進撃は、まさにアメリカ国内での「グローバルサウスの逆襲」ではありませんか。

 世界が発展した北と途上国の南に分断されているように、アメリカ国内でも分断が進んでいます。アメリカ社会の分断は、トランプ大統領が生み出したものではなく、これまで進んでいた分断がトランプ大統領を生み出したのです。

 アメリカ大統領選挙の行方は予断を許しませんが、トランプ氏が自国第一主義を掲げると、対抗してバイデン大統領も自国を優先せざるを得なくなります。結果として、アメリカは一段と内向きになり、世界の中で存在感を失っていきます。これまで日米関係を重視していればよかった日本ですが、今後の世界の激変に備えなければならない日が近づいています。

 アメリカという後ろ盾が遠景に後退すれば、日本はアジアの中で前に出なければなりません。そこに押し寄せるグローバルサウスの激流。日本の覚悟が問われるのです。そんなリスクいっぱいの近未来に備えるために、本書がお役に立てれば幸いです。

二〇二四年三月

ジャーナリスト  池上 彰


「はじめに」より

グローバルサウスの逆襲(文春新書 1451)

定価 990円(税込)
文藝春秋
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2024.05.20(月)