ロシアがウクライナに侵攻した際、国連総会はロシアを非難する決議を採択しましたが、インドや南アフリカなどかなりの国々が棄権に回りました。
インドにしてみれば、イギリスの植民地として辛酸を舐めた歴史があります。かつての帝国主義国家にロシアを非難する資格があるのかと思っていることでしょう。
また、東西冷戦時代、インドが中国と敵対した際、当時のソ連はインドを支援しました。ソ連が中国と対立したので、「敵の敵は味方」の論理でインドに接近したに過ぎないのですが、インドにはソ連に対する感謝の念があり、それがロシアに対する親近感につながっています。
経済が発展するインドにとって石油エネルギーは必須。ロシアから石油を購入することについて、他国からとやかく言われる筋合いはないと思っていることでしょう。
南アフリカも、かつては白人支配のアパルトヘイトに苦しんだ黒人たちが解放闘争に取り組んだ際、ソ連の支援を受けました。アパルトヘイトが撤廃され、黒人たちによる政権が誕生した今も、南アフリカの指導層はソ連の後継国家ロシアに恩義を感じているのです。
このように急激に発展してきた国々にとって、大事なことは自国の発展。国際連帯という美辞よりは自国第一主義です。
そんな全体の動きのモデルになっているのが、アメリカのドナルド・トランプ前大統領です。「アメリカ・ファースト」を主張し、国際協調に見向きもしない姿勢は、まさに開発途上国。グローバルサウスそのものです。彼は、まさにアメリカ国内での「グローバルサウス」を象徴しています。
国土の広大なアメリカは、地域によって大きな差異があります。私たちがよく見るニューヨークやカリフォルニアはアメリカ国内の「先進国」。それに対し、カンザスやオクラホマ、アーカンソーなどの農業地帯は、給与水準も決して高くはなく、高学歴の人が少ない地域です。まさにアメリカ国内でのグローバルサウスの位置に存在するのです。
2024.05.20(月)