趣のある歴史的建造物やモダンな近現代建築など京都ならではのロケーションを舞台に、国内外から選び抜かれた写真が街全体を彩る「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」。2024年、シャネル・ネクサス・ホールは20周年を迎えるにあたり、KYOTOGRAPHIEと新たな取り組みを展開する。本展では、シャネルのグローバル・アドバイザーで北京のユーレンス現代美術センター(UCCA)のディレクター、フィリップ ティナリをキュレーターに迎え、上海で結成されたソン タオ(宋涛/1979年生)とジ ウェイユィ(季炜煜/1980年生)の2人によるアートユニット、Birdhead(バードヘッド/鳥頭)を紹介する。
Birdheadは、中国の経済と社会が世界に門戸を開こうとしていた時期に、彼らの故郷である上海の都市変容を記録したクロニクルで一躍注目を集めた。20年に及ぶ活動を通じ、自分たちを取り巻く世界に声を上げ、称賛し、また批評するために写真の技術的・ナラティブ的限界に挑戦し続けている。近年は、KYOTOGRAPHIE 2024のテーマにも共鳴する、写真というメディウムの「源」、とりわけ光と時間の関係に立ち返って創作を行っており、伝統的な写真技法やその実践の限界を試すことで、表現と抽象の微妙なバランスを追求している。
Birdhead初の京都での展覧会となる本展は、280年の歴史をもつ帯問屋・誉田屋源兵衛の建築的特徴や歴史的背景を活かした2部構成。明治期から大正期にかけて建てられた竹院の間では、彼らの代名詞ともいえる作品で、昨年京都と東京で撮影された124点のイメージからなる「Matrix」の新作を展示。加えて、入念に組み合わされた写真画像を木材に直接シルクスクリーン印刷し特殊なラッカー技術で定着させた、「Bigger Photo」シリーズの最近の作品5点も展示される。
現代建築が融合する黒蔵では、写真の神秘的な力を崇める空想の宗教「Phototheism」という彼らの冷笑的な概念を提示。この“宗教”とその信条「We Will Shoot You(我らは汝を撮影す)」を根底として、コラージュ画像、インスタレーションが暗い空間に鎮座し、原始的な崇拝を想起させる。
写真界のみならず、中国、ひいては世界の現代アートに存在感を放ってきたBirdheadの独特な世界をこの機会にぜひ。
■Birdhead (バードヘッド/鳥頭)
2004年に結成されたソン タオ(宋涛/1979年生)とジ ウェイユィ(季炜煜/1980年生)の2人によるアートユニット。共に上海美術工芸学校卒、上海を拠点に活動。「Birdhead」という名前は、パソコンでファイルの名前を付ける際にランダムにキーボードを打ち込んで出てきたもの。Birdheadの創作活動は写真をベースに広範囲に渡る。彼らのレンズは遭遇するすべてのものを捉え、写真の文脈に、個人的な思考を織り込んで内面化していく。写真画像を使ったマトリックス、コラージュ、特殊なマウント技法、インスタレーション、フォトブックなど多様なメディアを駆使した作品を展開。様々な展示空間や環境の中で、多義的で進化し続ける独自の「Birdhead World」を実現させている。
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2024.04.05(金)
文=CREA編集部