この記事の連載
体力面では大変だけど、基本的には楽しい!
――意外なインスパイア元でした。二木さんはお笑い愛もテレビ愛も強いですが、その二つは重なる部分は大きくても完全なイコールではないじゃないですか。そこはどう捉えていますか?
そうですね。テレビにしかない良さ、お笑いの舞台にしかない良さがそれぞれにあると思います。でも一方で、表現という点では共通しているんじゃないでしょうか。テレビはいろんなつくり手が混ざりあっていて、総合芸術みたいなところがありますよね。お笑いもお笑いで、ネタというものをつくって表現している。だから私は両方好きなんだと思います。
――この連載でバラエティ畑の方にお話をうかがっていると、もともとテレビのお笑いは男性が好むものが多かったという話がときどき出てきます。今は変わりつつありますが、出ている芸人さんも、ディレクターやプロデューサー、放送作家も男性中心の時代が長かったと思います。いち視聴者だったとき、そのあたりを考えたことはありましたか?
テレビのバラエティで女性が少ないとか男性が多いとか思ってはいなかったですね。自分が好きなものはたまたま男性がつくっていることが多いな、という感覚だったかもしれません。男の子でも女性の小説家が好きな人がいるように、自分が好きなものがたまたまそうだったというか。昔から周りと好きなものがずれていることが多かったので、テレビがどうこうということは思わなかったのかもしれないです。
――実際に働いてみてからはどうですか?
今、制作の現場で女性が増えているのはすごく感じます。私がいる部署も半数くらいが女性なんですよ。ADで2人、制作進行で1人、ディレクターも3人が女性です。やっぱり今、強い女性が多いじゃないですか。意見をはっきり言うことも多かったりして、変わってきているのかなと思っています。
――ずっと憧れていた業界に入って「思っていたのと違った」と思うことはないんでしょうか。
大前提として「楽しい」がありますね。「好きな人たちと仕事して、嫌な面を見ちゃったりしないの?」と聞かれることがあるんですが、全然ないです。囲碁将棋さんをはじめお仕事をしている方々がみんながいい人たちだというのはもちろんありますが、もし芸人さんやタレントさんの嫌な一面を見たとしても、それを見られたこと自体を嬉しいと感じるかもしれません。お話したように地方局だと制約も多いですが、基本的には楽しい。大変なのは体力面くらいかもしれないです。
――そこはちゃんと大変なんですね。
テレビ業界で働いている女性はみんなタフだと思います。10年以上この仕事をしている方はきっとプライベートと仕事を両立されていることが多いと思うんですけど、私は5年目のペーペーなんでまだ全然で……生活は残念な感じになっています(笑)。
二木佑香(ふたつぎ・ゆうか)
1996年生まれ。東京都出身。2019年にUHB北海道文化放送に入社。『ZEKKEI NETA CLUB』の企画・演出。卒業論文のテーマは「お笑い番組から考えるテレビ番組のデザイン」。現在は「発見!タカトシランド」等でディレクターを担当。
『芸人打ち上げ酒』
北海道・札幌のすすきのを舞台に2組の芸人がロケとトークを行うバラエティ番組。初回は囲碁将棋と金属バットが出演。ライブ終わりに打ち上げ会場へ向かう2組をカメラが待ち構えていてロケが始まり……⁉ 街中で大喜利や腕相撲などさまざまなお題に挑戦する様子や、打ち上げ会場でのトークを楽しもう。
X(旧twitter) @uchiagezake
Column
テレビマンって呼ばないで
配信プラットフォームが活況を呈し、テレビの観られ方が大幅に変わりつつある今、番組のつくり方にもこれまでとは違う潮流が勃興しています。その変化の中で女性ディレクター/プロデューサーは、どのような矜持を持って自分が面白いと思うものを生み出しているのか。その仕事論やテレビ愛を聞く連載です。
2023.12.06(水)
文=斎藤 岬
写真=平松市聖