この記事の連載

池袋の街を見下ろしながら

 ところでずぼらには、その構造上、料理用のエレベーターが設置されている。料理や酒を注文するたび、1階で作られたそれらがエレベーターにのって到着する、どこか非日常な感じがまた楽しい。

 フライものが名物のひとつでもある店なので「かきフライ」と迷ったけれど、今日はかきバターで。ぷりぷりで旨味濃厚な旬の牡蠣の身に、香ばしいバター醤油味のブースト。選んで大正解だった。まぁ、フライを頼んでもきっと、大正解だった! と喜んでいたんだろうけど。

 あくまで大衆のための店だから、何気ないおつまみメニューもあれこれ揃っている。酒場のつまみの隠れた花形選手、ちくわ天は、とことん安心感のある味わいだ。

 うまい料理と酒で体が温まり、ふと窓の外を見ると、そうだ、自分は池袋にいたんだったと思い出す。冷たくなり始めた夜の風がほほに心地いい。大きく姿を変え続ける街のなかにあって、貴重な古き良き酒場。これからも末長く、この場所で歴史を刻み続けてほしいものだ。

ずぼら

所在地 東京都豊島区東池袋1-23-11
営業時間 11:00~14:30、17:00~22:30
定休日 日曜

パリッコ

酒場ライター・漫画家。酒場好きが高じて会社員から酒場ライターに転身。未知の大衆酒場、ちょっと怪しいとされる店にも果敢に訪れ、心のオアシスを発掘。酒場愛に溢れた文章やイラストは、吞兵衛の心をわしづかむ。酒カルチャー雑誌『酒場人』監修。著書に多数。新刊はスズキナオ氏との共著『ご自由にお持ちくださいを見つけるまで家に帰れない一日』(スタンド・ブックス)ほか。
X(旧Twitter):@paricco

← この連載をはじめから読む

2023.12.05(火)
文・撮影=パリッコ