海洋生物学者から写真家に転身
ふたりのバックグラウンドを知ると、この道に邁進する理由がより明確になる。メキシコの山間にある小さな街で育ったミッターマイヤーは本の中の海洋生物に魅了され、のちに海洋生物学者になった。
しかし「研究活動は海に頼って生活する生物を守ることには繋がらない」と感じ、独学でカメラの使い方を学んだ。さらに、ワシントンD.C.のコーコラン・カレッジ・オブ・アーツで印象的なビジュアルを作ることを学び、やがて視覚的なストーリーテリングが人々の心を動かすのに効果的だと判断した。
130カ国以上を旅して自然や動物を撮影し、2018年にはナショナル ジオグラフィックのアドベンチャー・オブ・ザ・イヤーのひとりにも選ばれるなど、自然保護写真家のパイオニアとして活躍。
一方、ニックレンは北極圏内のバフィン島にある小さな集落の3軒しかない非イヌイット世帯のひとつで育った。
「氷と雪が私の砂場で、イヌイットが先生でした。私たちはある朝オーロラの下で遊んでいました。私はひとりぼっちで、山に登り、そこに座って海氷を見つめていました。そのときは気づきませんでしたが、常に瞑想状態で、24時間365日、自然浴をしているのです」
特別な環境で幼少期を送ったニックレンは、野生生物学者として北極圏で働くようになる。恐ろしい未来を示すデータを集める仕事をしていたが、それだけでは無駄だと思い、写真や映像で現実を伝えようと自然や動物を撮影し始めた。そして、ナショナル ジオグラフィック誌で20年間仕事をし、経験を積んでいった。
2023.12.01(金)
文=CREA編集部
協力=ロレックス