透明度が高く海面からも見えるサンゴ礁、そこに群がる愛らしい魚たち。
旅先で幾度となく目にした美しき光景にどれだけ救われ、心満たされてきただろうか。
ところが、今、サンゴ礁の「白化」が世界のいくつかの海で起こっている。このまま放っておくと、サンゴは死に至り、結果的に海中の生物たちは住処を失ってしまう。
その現実を目の当たりにしアクションを起こしたのがオセアニアの小島に住む青年、ティトゥアン・ベルニコ。2017年にサンゴ礁再生活動を行う団体、コーラル・ガーデナーズを創設した。
ロレックスがグローバルな視点で地球環境保護にコミットし、地球の未来のために進めている取り組み「パーペチュアル プラネット イニシアチヴ」が、彼らの勇気ある活動をサポート。
このサンゴ礁の危機と向き合うコーラル・ガーデナーズの試みは、旅をこよなく愛し、海に癒されてきた人にこそ目を向けてほしい。
サーフィンをしながら目にした死に際のサンゴ
始まりの場所はオセアニアの海に浮かぶ、フランス領ポリネシアのモーレア島。この地で3歳から暮らしているティトゥアン・ベルニコは、澄みわたる海でサーフィンやフリーダイビングを楽しみ、常に海が中心の生活を送っていた。
16歳のとき、いつも通りサーフィンをしていた彼は、足元に白いサンゴがあることに気づき、衝撃を受ける。その姿はまるで幽霊のようだった。
彼が目にした白いサンゴは「白化」の現象。原因のひとつは地球温暖化による海温の上昇にあると考えられている。水が温まりすぎると、サンゴのなかに住む褐虫藻という単細胞の藻類が有害な化学物質を作る。有害物質が外に排出されることで、サンゴ自身が色を失い白く見えるのだ。白化したサンゴの命は長くは続かない。その現象は世界各地の海で増加しているという。
サンゴ礁には地球の海洋生物の25%が生息していると言われ、白化により海の生物の住む場所がなくなれば、多様性のある豊かな海を失うことになる。
「私たちはサンゴ礁のある海でサーフィンやダイビングをして育ちました。サンゴ礁は島を守り、食べ物、そして最高の瞬間まで、私たちの生活のあらゆるものを与えてくれます。だから今日、彼らを救うことを使命としました」
そう語るベルニコは、幼馴染みのタイアーノ・ティーホを誘い、2017年にコーラル・ガーデナーズを創設する。
さっそくベルニコは、海洋生物学者からの指導を受け、採取した健全なサンゴを海中で養殖し、サンゴ礁に移植するというプロセスを知る。自宅近くの海のサンゴ礁でその方法を実践し、さらにはフランスの大学で学び、サンゴ礁再生に人生をかける決意をする。
2023.07.13(木)
文=CREA編集部