サンゴ礁再生のアクションを世界に拡大させる
「大好きな遊び場である水中にいながら、サンゴを育て、サンゴ礁の保護をするという新しい仕事を生み出すとは、まったく想像していませんでした」と話すベルニコ。
現在、コーラル・ガーデナーズが行っているルーティンは、サンゴ礁の10%以下を採取し、それを海中の苗床で12~18カ月間育てるというもの。
サンゴの健やかな成長のためには、藻類が繁殖しないように手入れをするなど、日々のケアが欠かせない。3カ月ごとの経過観察も念入りに行っている。
技術面でも常に未来を見つめており、ロレックスとも共有する“絶えず向上し続ける”という哲学のもと、革新的な技術を取り入れた「CGラボ」を設立した。人工知能プラットフォーム、ReefOSを開発し、魚の個体数、種の生物多様性、サンゴの成長、水温などのデータを収集するセンサーやカメラといった、数々のデバイスを駆使し、サンゴ礁再生の成功率を上げている。
サンゴ礁の生態系を再生させるために、こういった最新の技術や方法、さまざまなデータを用いて、温暖化の影響を受けにくい、回復力のあるサンゴを育てる試みにも取り組んでいる。
活動の場は広がりを見せ、フランス領ポリネシアのタヒチ、アヘ、ティケハウなどの海中に点在する苗床で約10,000のサンゴを育て、5年間で28,000を超えるサンゴを植えた。
現在、フィジーのほか、カリブや東南アジアでも実現可能か調査中。目標は10~50の国際拠点を開設し、最新の技術を用いながら地元をはじめ世界中のサンゴ礁を再生させること。地球規模の挑戦が一歩、一歩、実現へと向かっているのだ。
サンゴの成長速度は1年に1~10センチメートルという、ゆっくりとしたスピード。白化したサンゴ礁がもとの姿に戻るまでには長い年月がかかる。
世代を超えて活動を繋いでいくためには人々への意識づけが必要。そのためにソーシャルメディアを通じて5年間で2億人と繋がり、プロジェクトの内容を映像や写真でシェア。より若い世代に興味を持ってもらおうと、地元の子供たちに体験型ワークショプなども行っている。
「変化を起こすことは太平洋の小さな島からでもできる。目標の実現のための知識やエネルギーがあることを証明したい」
コーラル・ガーデナーズのアクションは、海の危機の現実を私たちに伝え、共に乗り越えようと、背中を押してくれる。
2023.07.13(木)
文=CREA編集部