幽霊にゆかりが深い街がある

「天神さん(北野天満宮)」のお膝元、北野商店街もお薦めです。私が生まれ育った街でしてね。往時の姿を今なお残す、懐かしい雰囲気が漂う商店街です。そして、「幽霊を見た」「妖怪がいた」といった目撃例が多い街でもあります。私も小学生のころに幽霊に会った経験がありますし、クラスメイトにもある。霊が集まってくるのでしょう。

 北野商店街から続く大将軍商店街も妖怪にゆかりが深い。旧正月に不要になり捨てられた物たちが付喪神という妖怪になって深夜に徘徊したという「百鬼夜行(ひゃっきやぎょう)」の言い伝えが残っています。「物を大切にしましょう」という戒めですね。現在は「妖怪ストリート」という愛称で街おこしをしています。

 京都には「幽霊子育飴」というお菓子もあります。昔、夜ごと「飴」を買いにくる女性がいました。あまりにも毎晩やってくるので不審に思った店主が後をつけると、辿り着いた場所は、なんと墓場。そして土中から赤ちゃんの泣き声が聴こえてくるではありませんか。声がするところを掘ってみると、生きた赤ちゃんと、女性の亡骸がありました。

 我が子よりも先に死んでしまった女性が、子どものために飴を買いに訪れていたんです。赤ちゃんは救出され、その後、女性が飴を買いにやってくることはありませんでした。原材料は麦芽糖とザラメ糖のみを使用しており、さっぱりとした甘さ。おいしいですよ。

2023.11.18(土)
文=吉村智樹
写真=志水 隆

CREA 2023年秋号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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永久保存版 偏愛の京都

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