二人の男性の間で揺れ動くヒトミ
──ヒトミさんは大学生時代、ずっと岡くんに片思いしていたのですよね。久しぶりに再会して、恋らしきものが始まりますが、ヒトミさんは岡くんと会っている時、昔と違って余裕のある対応ができるようになった自分を「いつかメッキが剥がれてしまうかもしれない」と感じています。こうしたリアルな感情や設定には、どなたかモデルがいるのでしょうか。
登場人物にはモデルはいません。なので、沢村家の父も母もヒトミさんも架空の人物です。わたしが今まで生きてきた中で、会った人たち、見た人たちのかけらでできているのかもしれません。
年齢差のある恋と時間が経った昔の恋は、どちらも少し及び腰になってしまう点では似ていると思います。自分ならどうするだろうとドキドキしながら読んでいただければいいなぁと思いながら描きました。描いていてすごく楽しかったです。
──岡くんからデートに誘われてすぐに返事をしない自分を「無理目の女っぽい」と評するところや、「マカベくんと岡くん、どちらと会う時もドキドキする」と贅沢な悩みに心が揺れる姿も印象的です。益田さんの一番お気に入りのシーンはどこですか?
特に好きなシーンといえば、やはり恋のはじめでしょうか。
──まだ「恋」になるかどうかわからない状況の時に何度かマカベくんとご飯を食べに行って、「これは恋愛に発展するかもしれない」と感じつつも、「こっちもないけど、向こうもないわーっ」と叫ぶシーンなどでしょうか。
もう少し後ですね。ページでいうならP.32です(笑)。
14歳年下のマカベくんとたまに行くようになった夜ご飯。「このことを誰にも言っていないという状況」に恋の芽吹きをヒトミさんは感じ取っているのです。恋の一番おもしろい状況かもしれません。
──二人の男性から好意を寄せられ、「モテ期」かもしれないと思うヒトミさんが、夜10時にタクシーに乗ってマカベくんに会いに行くシーンも、恋のボルテージの高さが表れていました。
深夜、タクシーで好きな人に会いに行くヒトミさんが、恋にではなく自分自身に酔っているのかもしれないと思うシーンがあります。そんなふうに思うこともひっくるめて恋なんだよと思って描きました。
2023.09.02(土)
文=相澤洋美