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苔むすゴツゴツ岩の大地に湯けむりが

 空港から車で20分、霧雨のなか、遠くにうっすら煙が見えてくると同時に硫黄のにおいがしてきた。

 7時から22時まで1時間ごとに入場制限しているため事前予約は必須である。ただし、入る時間が決められているだけで、何時間いようと滞在時間は自由。

 チケットは3種類あるが一番シンプルなコンフォートを選んだ。入浴料にレンタルタオル、シリカパック、1ドリンク代金が含まれる。円換算するとこれで14,000円、夫婦ふたりで28,000円と、軽いめまい。アイスランドの物価高の洗礼を受ける。

 美術館のようなモダンなエントランスを抜けてチェックインするとICチップの入ったシリコンの腕輪を渡される。ロッカーの鍵の開閉はもちろんラグーン内での買い物ができるらしい。夫と別れてロッカールームに入ると広くて迷いそう。脱衣所、シャワー、ミラー前には必要なものは全て揃っている。スタッフも随時テキパキ片付けていて気持ちがいい。

 世界各国のあらゆる言葉が飛び交いワクワク感と満足感でみんな上機嫌だ。ロッカーのお隣さんはブラジルから。鍵が閉まらずもたつく私に「ずっとブルーラグーンに来るのが楽しみだったのよ。あなたも?」と手助けしてくれ仲良くなる。水着に着替えシャワーを浴びてから、さぁ入浴。

 ミーティングポイントの内湯で夫と合流。上がった時にバスタオルを渡してくれる番人がいる。いざ、外湯に進んでいくと……。

 そして息を呑む光景!

 「いやすごい」「アメージング!」。感嘆の言葉が飛び交う。アイスランドの象徴とも言える景色、雲と湯煙のなかに幻想的に浮かび上がるミルキーブルー。あまりにアイコン的すぎるからとスケジュールから外そうと一瞬でも考えた自分を一喝したい。

 スイスのヴァルスにあるピーター・ズントーが設計した「Therme Vals」をイメージしていたけれど規模が違う。

 お湯に入ってみると硫黄臭はない。ミネラル分が豊富な泉質で皮膚病に効果があり湯治目的で隣接する「シリカホテル」に滞在する人もいるそうだ。

 湯温は一定しておらず、我々は熱い湯が出る吹き出し口に近いところを探しながら温まる。ぬるめの中央にはヨーロッパの方々が。適温は人それぞれ皆好き好きに場所を選んでリラックス。

2023.08.06(日)
文・撮影=大坪千夏