観客を「おとぎ話」の世界に没入させる仕掛け

 会場が明るくなると、「暑いね~!」と素直な感想を漏らしたメンバーたち。汗でマイクが故障するほど、この日の会場は熱気に包まれていた。自己紹介では「モアモアキュン! HUENINGKAIです」「MOAの皆さん、TXTの美男子BEOMGYUです」とファン悶絶の愛嬌を披露。「こんなに大きな会場で皆さんにお会いできて本当に嬉しいです」と、ファンで埋め尽くされたドームの光景を誇らしげに見つめるBEOMGYに呼応するように、無数のペンライトが揺れていた。

 この日、MCの9割を日本語でこなし、自身の思いを直接MOAに語り掛けた5人。「香りとともに魔法のような時間が始まった今日の公演を、最後まで僕たちと一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです」と語った後は、スポーティーな衣装にチェンジし、バスケットボールを巧みに使ったステージを繰り広げた。

 24時間相手のそばにいたい気持ちを歌った『Cat & Dog』後のMCでは、TAEHYUNがBEOMGYUに「世界で一番可愛いわんちゃん」Verの『Cat & Dog』をリクエスト。しゃがんで首を傾げ「ワンワンワン!」と鳴くBEOMGYUの姿に、悲鳴のような歓声が上がった。続くペンライトを使ったゲームでは、SOOBINがTikTokで流行した「Toca Toca」ダンスを踊り出し、MOAを翻弄。さらには大阪にちなんで、「ばーん!」とファンやメンバーを撃ち抜く仕草を見せ、少年のような無邪気なトークで観客を和ませた。

「一生続いてほしい魔法のような瞬間」(SOOBIN)

「いまの瞬間が永遠になるようにTOMORROW X TOGETHERと一緒に逃げようか」(TAEHYUN)

 そして、2人のシリアスな言葉を合図に舞台は次のシークエンスへ。『9と4分の3番線で君を待つ (Run Away) [Japanese Ver.]』をパフォーマンスすると、魔法のような光の演出に包まれたHUENINGKAIがソロダンスで観客を魅了。汽車のようなセットが登場するなど、観客を「魔法」や「おとぎ話」の世界に没入させる仕掛けが随所に施されたステージは、デビュー以来ずっとストーリー性やファンタジー性を大切にしてきたTXTの真骨頂と言えよう。

 YOASOBIの幾田りらがフィーチャリングで参加した『0X1=LOVESONG (I Know I Love You) feat. 幾田りら [Japanese Ver.]』や、ユニット&ソロダンスでセクシーなコンセプトを際立たせた『Opening Sequence』など続けて8曲を披露したTXT。少年から大人へと成長する過程の葛藤や誘惑をステージ全体で表現するかのような構成に、多くのMOAが心を掴まれたに違いない。

2023.07.03(月)
文=CREA編集部