最近は、コンサート演出やアーティスト育成まで手がける仲宗根梨乃が、進化し続けるK-POPの15年を振り返った。


メンバー一人ひとりの輝きを最大にしたい

 ダンサーだった私が、振付師や演出家になるなんて、20代の頃は想像もしていませんでした。運命を変えたのは、誰かがネットにあげた私のダンス動画。それをK-POP最大手の芸能事務所の一つである、SMエンターテインメントの関係者が見て、韓国の音楽事情など全くわかっていない私の元に、「SHINeeというグループのデビュー曲の振付をやってみませんか」とオファーがきたのです。

 初めて訪れた韓国で会ったSHINeeのメンバーは、礼儀正しく熱心で、素晴らしい子たちでした。何より驚いたのが、彼らのスポンジみたいな吸収力と集中力! さらには、各ジャンルのプロが結集したスタッフの全員が「5人のデビューを成功させる」という熱い気持ちで徹底的に話し合いを重ね、こだわりをもって作品をつくる姿に胸を打たれました。

 リハーサルの最終日にはメンバーから直筆の「ありがとうカード」もいただきました。エンターテインメントの世界で「いい作品をつくろう」という熱量は、いつの時代もどんな場所でも同じだと思いますが、あそこまで多くの人が、細かい部分まで心を一つにして作品に集中する。振付師として初めて参加した仕事で、その本気度と姿勢は勉強になりました。

 私が振付や演出をするときは、「売れるもの」とか「キャッチーなもの」ということはあまり意識せず、まずは楽曲の魅力をどう表現するか、何をしたら新しいか、ということを大切にしています。そして、メンバー一人ひとりの輝きを最大にしたい。ファンの皆さんに楽しんで、驚いて、喜んでほしい。

 だから自分の中にあるアイデアをフルにぶつけていきます。ありがたいことに、SMのスタッフは、どんなアイデアでも一度は必ず耳を傾けてくれ、「これはやってみましょう!」とか「こちらのアイデアはどうですか?」と、お互いの意見を率直に出し合えます。

 私はメンバーも含めてクリエイターと共同作業をすることが好きなんです。関わる人数分のセンスとアイデア、可能性が加わるから。完成した作品を見るとチームワークの大切さがよくわかります。

 SMのすごさは、こうしたチームの作り方。世界中の才能あるクリエイターとスターの探し方はダントツだと思います。

2023.05.10(水)
Text=Yoko Kikuchi

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