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 国際映画祭の舞台としても知られる韓国第2の都市、釜山は映画やドラマのロケ地として脚光を浴びる一方、昔ながらの港町風情や暮らす人々の篤い情も健在。

 この地に惹かれて通う、カメラマンの衛藤キヨコさんと文章担当の小池花恵さんのユニット「おかっぱとボブ」が案内する、心もお腹もあたたかくなる2泊3日の釜山旅。

【アクセス】

ソウル駅より韓国高速鉄道KTXで釜山駅(約2時間半)または金浦空港から飛行機で釜山・金海国際空港(約1時間5分)。


釜山随一の魚介市場にある毎日通いたくなる朝ごはん

 韓国一の規模を誇る、海産物を扱うチャガルチ市場。原色のパラソルの下、露店のアジメが食べているお盆にのった定食が気になって、どこのですかと訊くと、チャガルチ市場エリアにある新東亜市場のタミャン食堂のものだという。

 釜山を旅するきっかけをくれたのは紀行作家チョン・ウンスクさんの『釜山の人情食堂』という本だが、掲載されていたエピソードを読み、これは食べに行かなければと思った。今ではここで朝ごはんを食べるために釜山に行くと言っても過言ではない、定食が名物の大切な店。

 通い出した5年前は6,000ウォン。儲け度外視のキム・スンランさんと「27歳で始めて30年が経つ」と話す旦那さんのイ・ヨンチャンさんの太っ腹に頭が下がる。

 旅の間、朝になると決まって聞く「汁が飲みたい」という一言。タミャン食堂の定食はおかっぱの願いを存分に満たしてくれる。わかめスープ、ズッキーニの入ったテンジャンチゲ、よく漬かったシンキムチのキムチチゲと3種もスープがついてくるのだ。

 温度を保ってくれるトッペギから、スッカラッで忙しくスープを口に運ぶ気配を感じながら、私は焼き魚を。油で揚げ焼きにされ、日によって種類が変わる。今日は塩気のきいた淡白で甘い白身のカルチ(太刀魚)だ。

 ホウレン草やズッキーニのナムルと、よく焼かれた目玉焼きに醬油ベースのヤンニョンも最高のご飯のお供と言える。お腹も心も大満足な朝ごはんを食べたら、いつも元気に旅をスタートできるのだ。

【南浦洞】
タミャン食堂(タミャンシッタン/담양식당)

所在地 釜山広域市中区チャガルチ路42 チャガルチ新東亜水産物総合市場 地下1F(부산광역시 중구 자갈치로 42 자갈치신동아수산물종합시장 지하 1F)
電話番号 051-248-0146
営業時間 6:00~16:00
定休日 第2・4火曜
●カード不可

2023.06.05(月)
Photographs=Kiyoko Eto
Text & Coordination=Hanae Koike

CREA 2023年春号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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定価950円

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