毎朝のルーティンと休日の過ごし方

――お一人になる時間を大切にされているようですが、それは「考えること」に集中するためですか? それともリセットするため?

 両方ですね。いま僕はベランダに人工芝を敷いて、充実させているんです。そんなに広いわけではないのですけれど(笑)。

 毎朝、芝の上で台本を読んだり、ぼーっと考えたり、コーヒーを飲んだりする時間が至福です。

 時間に追われると、何もできなくなってしまうので、そういう時間は意図的に設けるようにしていますね。

――ボルダリングが趣味だとか。ご自宅には、さすがにない?

 アハハ、ないです。一度、壁一面をボルダリングウォールにしようとしかけましたけど、無理でした(笑)。

――登山もお好きだそうですが、それもご自分の時間を作るためですか?

 そうですね。山では携帯の電源も切りますし、わかりやすくオフになれます。

 家は台本を読んだりするので、半分仕事場のようなところがある。山では、環境をガラッと変えられますし、単純に山にいるのが好きなんです。

――お名前は「海」なのに、山派なんですね?

 そうなんです(笑)。小さい頃は、釣りやシュノーケリング、ビーチバレーなど、ひたすら海にいたのですが、いまは山ですね。

――9歳から児童劇団に入られて、12歳で映画デビュー。小さいときから大人に囲まれて、同級生より早熟だったのではないかと思います。はやくに大人になってしまったという感覚はありますか?

 それはあまりないですね。そもそも人と比べないです。でも、「大人っぽいね」とか「落ち着いているね」と言われることは多くありました。

 僕は学生時代に「部活」をやったことがなくて。部活に打ち込む時間があったらよかったのかなと思うことはありますが、人生での後悔がもしあるとしたら、それくらいです。

――作品のなかで学生役をするとき、擬似学園生活、擬似部活のような感覚を味わえたのではないですか?

 そうですね。映画でも舞台でも、作品作りっていつも「青春だな」と思います。

 プロの集団なのですが、60代や70代の大御所のカメラマンさんでも、一つの作品を作るのに子供のように夢中になっていらっしゃる姿を見ると、これは本当に楽しい仕事で、常に青春を味わっているのだなあと感じます。

――30代や40代でこういう俳優になっていたいというイメージはありますか?

 僕はやっぱり映画がすごく好きなので、できることなら全ての映画に出たいんですよね(笑)。

 それに近づけるようになるには、「井之脇くんに任せたら大丈夫」と思っていただけるような存在にならなきゃいけないと思います。舞台も含めて、いろんな作品に呼ばれる俳優になりたいです。

2023.05.30(火)
文=黒瀬朋子
撮影=佐藤亘
ヘアメイク=新宮利彦(VRAI)
スタイリスト=坂上真一(白山事務所)