最近観てよかった映画を教えてください!

――映画はどのくらいの頻度で観ているのですか?

 この2ヶ月くらいは、『ペンディングトレイン~』のロケに追われて、ほとんど観られていないですが、家で観るものも含めたら、基本的に映画は週に4~5本、舞台は月に1~2本は観たいなと思っています。

――日常的に近いものなんですね。映画は井之脇さんにとって友達ですか? 先生?

 擬人化ですか……うーん、なんだろう(真剣に悩む)。

 僕は、知らない世界を見せてくれるような作品が好きなんですよね。

 異国の文化を知ったり、これまで出会ったことのないような人物が描かれていたり。映画も舞台も、僕に知らない世界を教えてくれるものですね。

――最近、観てよかった映画を教えてください。

 めちゃめちゃよかったのは沖田修一監督の『おーい!どんちゃん』です。

――沖田監督が、生まれたお嬢さんの成長を映像におさめようと、自主映画で撮った作品ですね。共同生活をしている売れない俳優3人のところに元カノが赤ちゃんを置いていく。戸惑いながら青年たちが育てていくという物語。手作り感満載の傑作でした。

 映画ってやっぱりお金じゃないんだなと思いました。機材だって、ものすごくいいものを使えているわけではないですが、あれだけ愛の詰まっている映画を観たことがないです。

 まさに、僕の知らない世界でした。

 小中和哉監督の『Single8』も面白かったです。映画作りの夢があって、キャストも瑞々しかったです。ああいうお芝居ってつけようと思ってもなかなかつけられないなと思いながら観ていました。

――映画はいつも俳優目線で観ているのですか?

 単純に観客として楽しんで、観終わったあとに考える感じですね。でも、こんなふうに演じるとこう映ってしまうのか、と観ながら考えてしまうこともあります(笑)。

――全てが俳優業につながっているのですね。天職ですね!

 どうでしょう? 自分には向いていないんじゃないかと思うこともあります。

 器用ではないですし、考え方も固いところがあるので……。

 でも、僕はこれまでバスケや野球や水泳やピアノをやってきて、どれも人並みにできるようになれたけど、役者はいまだにできているかどうかわかりません。

 (俳優業は)ゴールがありませんし、毎回新しい気持ちで臨めるので、そこが楽しいです。

井之脇海(いのわき・かい)

1995年生まれ。神奈川県出身。2007年、映画『夕凪の街 桜の国』にてデビュー。08年『トウキョウソナタ』で「第82回キネマ旬報ベスト・テン」新人男優賞を受賞。近年の主な出演作に、ドラマ『義母と娘のブルース』(18年 TBS)、『いだてん~東京オリムピック噺~』(19年 NHK)、『クロサギ』(22年 TBS)、『ちむどんどん』(22年 NHK)、映画『ミュジコフィリア』(21年)、『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』(21年)、『ONODA 一万夜を越えて』(21年)、『猫は逃げた』(22年)『犬も食わねどチャーリーは笑う』(22年)など。『今際の国のアリス』シーズン2(Netflix)、『失恋めし』(Amazon Prime Video)が配信中。『ペンディングトレインー8時23分、明日 君と』(TBS)、『0.5の男』(WOWOW)に出演中。

M&O-playsプロデュース『カモメよ、そこから銀座は見えるか?』

作・演出:岩松了
出演:黒島結菜、井之脇海、青木柚、櫻井健人、岩松了、松雪泰子
東京公演:2023年6月3日~25日 本多劇場
富山公演:2023年6月28日 富山県民会館ホール
大阪公演:2023年7月1日~2日 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
新潟公演:2023年7月9日 りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館・劇場
問い合わせ:M&O plays
電話番号 03-6427-9486
https://mo-plays.com/kamomeyo/

2023.05.30(火)
文=黒瀬朋子
撮影=佐藤亘
ヘアメイク=新宮利彦(VRAI)
スタイリスト=坂上真一(白山事務所)