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『週刊少年ジャンプ』で職業の矜持を語る露伴に、衝撃
――高橋さんはもともと「ジョジョ」シリーズの愛読者で、岸辺露伴が一番好きなキャラクターだとお聞きしました。露伴のどんなところがお好きですか?
職業の哲学を少年誌で語ってしまうところがすごいなと思っています。少年漫画の登場人物といえば、武将や戦士、身近な高校生だったりしますが、そこで「漫画家」が登場するの!? と驚いたんです。しかも、漫画家としての矜持のようなものを最初から語るわけです。
――少年誌の王道は、漫画家を目指す主人公の成長物語になるはずなのに。
ですから僕にとって、岸辺露伴の存在は異常事態でした。しかも特殊能力を持っていて、偏屈で、おおよそいい人とは言えない。こんな人が存在してもいいんだということに、僕は非常に衝撃を受けたんです。
当時、中学校を卒業して、高校という社会の縮図のような場所に入って「ここから外れたら駄目」という枠の中に閉じ込められた教育を経て、均一化、平均化されていく。そういったものを常々教え込まれている感覚が常にありました。だから漫画を読んでいても、悪を倒すヒーローも平均化されているなと感じていました。
そこで岸辺露伴という漫画家が、漫画の中に悪として登場し、職業のことを語り出し、かつその職業には譲れないものがあると言い出した。当時の平均化されつつある僕は「いや、ちょっとよく分かんないんですけれど!」と混乱し、興味津々になったわけです。
当時からお芝居というものについて考えていた人間だったので、「平均化されなくていいんだ」「周りに何を言われようが、自分の好きなことを通すということは、何よりも自分に誇りを持てることなんだ」という価値観を、露伴から教えてもらった部分が非常に強くあると思います。
2023.05.25(木)
文=須永貴子
撮影=三宅史郎
ヘアメイク=田中真維(MARVEE)
スタイリスト=秋山貴紀[A Inc.]