岸辺露伴は、荒木飛呂彦原作「ジョジョの奇妙な冒険」のスピンオフシリーズの主人公。劇場長編映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』で露伴を演じているのは、ドラマ「岸辺露伴は動かない」(1~3期)に引き続き、高橋一生さん。
ロケ先のパリで感じたことや、特殊能力を持つ人物を演じる鍵となる「リアル/リアリティ」について、岸辺露伴というキャラクターから受けた影響など、あれこれお聞きしました。
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紛うことなきリアルが僕らの“リアリティ”を助けてくれた
――「岸辺露伴」がいよいよ映画化。ドラマ3期のラストで、「次はルーヴル美術館」という台詞があったということは、今回の映画化は決定事項だったということですよね?
はい。1期を撮影している後半に、もう2期の話をしていました。皆さんからの反響ももちろんあったと思いますが、まずスタッフ内に「これは面白い」と思ってくださった方が多かったので、すぐに続編の話になったのだと思います。3期の次は映画をやると決まっていたので、今回も自然な流れで撮影に入ることができました。
――ルーヴル美術館が撮影を許可した日本映画はこれが2作品目と聞いています。ルーヴル美術館でのお芝居は、どんな体験でしたか?
2018年にルーヴル美術館展のオフィシャルサポーターをやらせていただいたときに、地下の作業場や、額装を直す職人の方々がいらっしゃる、裏側を覗かせていただきました。今回はお客さんとして入っていくルートを、露伴という役を通して見ていくことで、建造物や、作品がそこに飾られている意味などを感じながらお芝居ができたような気がします。
開館した当時(1793年)は今のような照明がないわけですから、「自然光でこの宗教画を見ていたのか」と感じたりすることが、自分の役に多分に影響があったと思いますし、そこが面白かったです。
――ルーヴル以外の場所でもロケをされていますね。思い出に残っているロケ地や、映像的に手応えのあったシーンを教えてください。
アレクサンドル三世橋や、セーヌ川をまたいだところにあるサン=ルイ島のオープンカフェといった、町並みでの撮影がとても良かった気がします。横浜の山手十番館(ドラマのロケで使われたカフェレストラン)と同じような、何気ない空間で撮影ができることの面白さを感じました。特別な場所だからといって特別なことをせず、ドラマのときと変わらず、いつも通りの感じで撮影ができました。むしろ、日本よりも違和感のない撮影だった気がします。
――それは不思議ですね。
携帯でバシャバシャ写真を撮ってくるような方がいなかったので(笑)。
美術館でももちろん、あの建造物の中で自分たちが芝居をすることで、ある種の画の説得力のようなものはあると思います。それと同じように、パリの町並みという紛うことなきリアルな場所で撮影をしたことが、僕らがリアリティを生み出す上で、手助けをしてくれていたと思います。
――スタッフさんは日本と現地の混成チームだったそうですが、それでも「いつも通り」に撮影ができたのはなぜでしょう。
もともとドラマで一緒にやってきたスタッフの方々が、現地のスタッフの皆さんと前もって打ち合わせする時間を多く取り、とても仲良くなっているところに僕ら演者が入っていくという流れだったからだと思います。それにパリのスタッフの方々が、日本のスタッフと変わらないんです。音声さんは「音声さん」の格好をしていますし。映画を撮るということは国は違えど共通なんだなという親近感がありました。
2023.05.25(木)
文=須永貴子
撮影=三宅史郎
ヘアメイク=田中真維(MARVEE)
スタイリスト=秋山貴紀[A Inc.]