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昔は部屋にこだわりがないタイプだった

――窓や玄関から入る光の描き方も印象的でした。

 はい、光の表現には気を使いました。私はもともと色塗りに苦手意識があるんですが、1冊分の漫画を描くのに朝昼夜とか季節感のバリエーションが必要で。雨の日の暗さ、夏の日差しなどは意識して描きました。

――架空の部屋を作る上で参考にする資料は、やっぱり雑誌ですか。

井田 雑誌も見ますけど、最近はInstagramを参考にしています。一般の方が投稿しているので、雑誌よりも生活感がある気がして。人それぞれの好みやスタイルが見えてくるので、参考になります。

――本を読んでいると井田さんのお部屋が気になってくるんですが、どんな感じなんですか?

井田 よく聞かれるんですが、荒れ放題です(笑)。私生活でできないことを絵で発散しているところがあるので。机の後ろには本の山が10くらいあって、ヤバイです。

――登場人物で、ご自身に近いキャラクターはいますか?

井田 カエさんですね。お風呂に入るのが面倒とか、休みの日に寝過ごしたとか、ちょっと怠惰な様子を描いたので、自分に近いかもしれないです。

――著書ではキャラクターのこだわりの品が紹介されています。ご自身の生活でも、こだわっていることやものがありますか?

井田 昔はこだわりがない方だったんですが、最近は好きなもので揃えたいって思うようになりました。「適当に買えばいいや」じゃなくて、「自分の好きなものを大事に使おう」って。

 最初に一人暮らしを始めた時は大学生で、100均なんかの手近な食器を使っていたんです。そういう食器ってすごく気に入って買ったわけじゃないのに、長持ちするので捨てられないんですよね。それはとてもいいことではあるんですけど。年を重ねたら自分の好みがわかるようになってきて、「好みのものを使いたい」という欲が出てきたんです。結果的に、気に入った食器の出番が多くなるんですよね。

――理想のおうちに住むためにやっていることはありますか?

井田 今の家には6年ほど住んでいるのですが、そろそろ引っ越したいと思っていて。理想の家を作るチャンスだな、と。まずはミドリさん宅のような大きな本棚を買って、床に散らばっている本を収納したいですね。

インタビュー【後篇】に続く

家が好きな人 (リュエルコミックス)

定価 1,870円(税込)
実業之日本社
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井田千秋(いだ・ちあき)

書籍の挿絵、装画などを手掛けるイラストレーター。2023年2月に上梓した『家が好きな人』(実業之日本社)が累計発行部数10万部のベストセラーとなる。著書はほかに『わたしの塗り絵BOOK 憧れのお店屋さん』(日本ヴォーグ社)など。児童書では『へんくつさんのお茶会』(学研プラス)、『ぼくのまつり縫い』(偕成社)シリーズなどの挿絵を担当する。自主制作では、架空の部屋・生活シーン・家具などのモチーフを好む。
Twitter @dacchi_tt
Instagram @dacchi_tt

次の話を読む「社会人になり趣味の映画やカフェへ 行かなくなって」『家が好きな人』 井田千秋がイラストの世界に進むまで

2023.05.26(金)
文=ゆきどっぐ