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キャラクターは、ちょっと郊外に住むイメージ

――コミック&イラスト集に登場する5人のキャラクターたち。生活を切り取る上で、意識したことはありますか? 

井田 現実的な表現と、イラストだからこそ実現できる憧れのバランスを意識しました。例えば、カエさんの「収納で眠る」もそう。読者と地続きにある世界で、憧れだけれどできるかもしれないバランスで描きました。

――キャラクターたちは、みんな東京に住んでいるんですか?

井田 どうでしょう。第4章のミドリさんだけ、少し離れた場所に住んでいるイメージなんですけど。みんな都心よりはちょっと郊外に住んでいるんじゃないでしょうか。

――ミドリさんの家の間取りは、半地下の書斎や2階のベッドルームが印象的です。

井田 彼女の家には私の憧れが詰まっているんです。ふすまの奥に書斎があって、2階にベッドスペースがある間取り。私の作品にも昔から共通して登場します。

 一方で、最終章のアキラさんは、「これから一人暮らしを始めるぞ」というキャラクターで、シンプルなワンルームに住んでいます。出版時期が2月だったのもあって、新生活を始める読者と一緒にこれからの日々が楽しみになるような描き方を目指しました。

漫画『チム・チム・チェリー!』でテディベアにハマる

――どの生活にも、ぬいぐるみなどで「クマ」が登場しますね。

井田 あゆみゆい先生の漫画『チム・チム・チェリー!』(講談社)でテディベアの存在を知ってから個人的にずっと惹かれているモチーフなんです。

 女性の部屋を描く時ってファンシーなアイテムを置きたくなるんですが、ネコやウサギのぬいぐるみを置くとファンシーに寄りすぎる感覚が個人的にあって。それがクマだと塩梅がいい。固定キャラがいるわけではないんですけど、ユーモラスな存在として描いています。

――一方で、スマホは現実に引き戻されるアイテムだから登場させなかったそう。あえて描かなかったものはほかにもありますか?

井田 彼女たちの職業や年齢、パートナーの有無といった情報にはなるべく触れませんでした。ミドリさんのみ、在宅仕事ということもあり職業を明言しています。

 今回の本は、読者さんに親近感を持ってもらいたい、その部屋の住人のような気持ちで見てもらえたら…という思いもあります。そのためには、キャラクターの輪郭がはっきりしすぎてしまうと少しノイズになってしまうかな、と極力シンプルな情報にとどめました。

 また、この本は家そのものが主役でもあります。家の様子を詳細に描くことで、そこから彼女たちについて感じ取ってもらえれば充分かなという気もしています。

2023.05.26(金)
文=ゆきどっぐ