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 2023年2月に発売されたコミック&イラスト集『家が好きな人』は、5人のキャラクターの生活を切り取った短編集です。約2カ月で重版7刷、電子書籍と合わせて累計発行部数10万部のベストセラーとなりました。読者からは「自分の好きな時間を楽しんでいいと後押しされた」と癒やされる人が続出しています。同書の誕生秘話を、著者の井田千秋さんにお聞きしました。

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出版のきっかけはコミティアでの出会い

――コミック&イラスト集となった経緯をお聞かせください。

井田 オリジナル作品の即売会「コミティア」に出展したのがきっかけです。当時販売していたエッセイ本『たとえばの話』を見て、実業之日本社の編集者さんが「漫画やイラストで本を出しませんか」と声をかけてくれました。

 私は漫画を描いた経験が少なかったので、「まずは自由に描かせてほしい」と時間をいただき、2020年に書籍の第1章「ササさん宅」にあたる同人誌版『家が好きな人』を制作。その漫画をSNSに投稿したらフォロワーさんからの反応もよかったので、同人誌版を元に書籍化していきました。

――作品のコンセプトは何ですか?

井田 私の自主制作は、架空の部屋で過ごすキャラクターのワンシーンを切り取ったイラストがほとんど。そういう雰囲気を漫画でも表現したい、から始まりました。イラストが一瞬を切り取るのに対して、漫画では家の中を移動させたり、時間経過を描けたりします。架空の部屋の間取りやインテリア、キャラクターの仕草など、より詳細にお伝えできると思いました。

 「自分だったらこういう生活に憧れる」が作品の発端になっているので、自然と登場人物には女の子ばかりが集まってきました。

――今作の末尾には、幼いころに遊んだ「不動産のチラシの間取り図に、家具を描き入れる」延長のように感じている、と書かれていますね。 

井田 物件の間取り図って見ているとワクワクして、「自分の部屋だったら」と空想が広がっていくんです。ドールハウスの遊びにも通じる気がしますが、登場人物の暮らしを細かに表現した絵本も好きなので、それが作風につながった気がします。

2023.05.26(金)
文=ゆきどっぐ