世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、週替わりで登板します。

 第11回は、大沢さつきさんがタイ、ミャンマー、ラオスの国境で出会った“微笑の国”の人たちのアナザーサイド。

国境の街チェンセーンはゆかしき古都

秘境ゴールデントライアングルのイメージ。正面の小屋は、実はフォーシーズンズ テンティッドキャンプのバーなのだが

 ゴールデントライアングルといえば、秘境のイメージ。タイとミャンマー、ラオスがメコン川を挟んで接する山岳地帯は、麻薬密造の悪名で知られた。と、そんなイメージでタイ側の彼の地に出かけたのだが……。もー、全然。のどかな田舎街からは、暗躍するギャングの影は微塵も感じられない。

こんなボートに乗ってメコン川を行きます。国境地帯だから、国旗は必要ね
大きな仏像が見えて来たら、いよいよメコン川本流。川の向こうはラオスだ
古都チェンセーンでもいちばん有名なお寺、チェディルアン

 元々、貧しさから始まったケシ栽培。タイ政府は、麻薬の取り締まりを強化するだけでなく、高級なドイチャン・コーヒーやドイトゥン・コーヒー、高価な品種の烏龍茶の栽培を奨励することで、一帯の経済を立ち行かせようとしている。この経済安定策には王室も一役買っていて、プロジェクトを立ち上げ、伝統工芸品にモダンなセンスを注入したりとサポートしているのだ。さすが“微笑みの国”。ムチ打つだけでは解決にならないことを知っている。近年では、隣国ラオスとの間に架かるインターナショナル・ブリッジや、中国とつながる高速道路など、国際的な要衝へと姿を変えようとさえしているのだ。

 とはいえ、国境の街チェンセーンは、11世紀に栄えた王国の都で由緒正しき古い寺院も遺る。まだまだ古都の魅力を伝えるゆかしい街である。

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2013.12.09(月)
text & photographs:Satsuki Osawa