この記事の連載

パパが亡くなったことはまだ受け止め切れていないかもしれない

――いま、猪木さんがいない寂しさを感じていますか。

 今はまだ受け止められていないのかもしれない。考え始めるときりがなくて、どん底の寂しさに入ってしまう。そうすると仕事もできなくなるし、子供の面倒も見られなくなるので、考えないようにしています。もしかしたら、もっとあとになってゆっくり振り返った時にドンと寂しさがくるかもしれません。

 尚登(寛子さんの次男)はアマチュアレスリングをやっていて、この前、初めての試合で勝ったんです。その時に「パパに教えてあげなきゃ――あ、もうパパは居ないんだ……」と思いました。

 そのまま沈んでしまうと抜け出せないので、自分で切り替えるようにしています。

――猪木さんのカラーといえば「赤」です。この色は寛子さんにとってはどういう意味を持っていますか?

 やっぱりパパは人前でいっつも明るくって。太陽のように人にエネルギーをあげているイメージがあります。

 尚登は道で真っ赤なスカーフをしている人とすれ違うと、「あれ、じいちゃんのファンかな!?」って言うんです(笑)。いや、あれはファッションだと思うよって、教えてあげるんですけど。

――それくらい猪木さんを象徴した色ですよね。闘魂――闘いのイメージもありました。

 私の中のパパはそんなことなくて。サンタモニカで散歩したり山を登ったり、そういう穏やかなイメージなんです。

 選手が遊びに来たときに、みんなで山へ登りに行ったりしたんですけど、そういうときのほうがいきいきして、自然な表情だったと思います。

2023.04.03(月)
文=児玉也一
写真=末永裕樹(寛子さんポートレート)