みなつき 原作/二ツ家あす作画『同居人はひざ、時々、頭のうえ』

 想像力をジャマされるのが何より嫌いなミステリー作家の朏 素晴(みかづき すばる)。加えて、極端に偏屈で、人とコミュニケーションするのが苦手なため、たまに話す相手は担当編集者くらい。そんな素晴のもとにやってきたハチ黒猫は、すぐさま彼の頑なさを溶かしてしまう。

 ある出来事を、猫視点の〈ハル編〉と、作家視点の〈素晴編〉、2方向から捉えて読ませるのが本書のキモ。両者の意識のすれ違いが微笑ましいのだ。

 ハルは素晴を「私が守らなくちゃ」という義務感に駆られ、ネコ飼育ビギナーの素晴は周囲の助けを借りてハルを育てるうち、他者と交流することの大切さに目覚めていく。

 6巻では里親探し家の床下で見つけた子猫を保護。新たなファミリーも迎えており、おり、現在9巻まで刊行。この先の展開も楽しみ。

同居人はひざ、時々、頭のうえ。(1) (ポラリスCOMICS)

定価 627円(税込)
フレックスコミックス
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卵山玉子『ねこの手キッチン』

 モフモフ猫×お手軽自炊がテーマ。おいしいとこ取り過ぎないか、と斜に構えていたら足元を掬われた。実は猫とおひとりさまの幸せな邂逅ドラマだ。

 28歳独身ひとり暮らしのモモの部屋に、突然訪ねてきたしゃべる能力を持つ猫。名前はネコ助。モモがやらかした焦げギョーザをラザニア風にリメイクして胃袋をわしづかみ。

 自分が料理をするからとモモに同居を承諾させたものの、ネコの手では調理はできない。代わりに手順をアドバイスしてモモを料理上手にしてしまう知恵猫なのだ。

 一方で、ネコ助は、頭頂を撫でられるとゴロゴロ言う、グリンピースや丸めたアルミホイルを球遊びの要領でじゃれてしまうなど、猫の生態を披露。人間くさいのに猫らしさをのぞかせてしまう瞬間が愛らしい。

 ふたりの掛け合い漫才のようなテンポ感に笑いがこぼれる。作りたくなるようなレシピも揃っている。

ねこの手キッチン

定価 1,320円(税込)
文藝春秋
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2023.02.25(土)
文=三浦天紗子