この記事の連載

芝居はこの世のありようを映し出すもの。その使命が芝居にはある。

――非常に試行錯誤なさって変えられている今ということですよね。時代に沿った形で作品を届けることは、演出家としての面白みのひとつとも言えるのでしょうか?

 『ハムレット』のセリフに「芝居の目的はひとつ、この世のありようを鏡に映し出すことだ」というのがありますが、その使命がやっぱり芝居にはあると思います。実際に起こっていることがあるのに、「そのこととは関係ない」というふうな演出には、やっぱりできません。

 「使命」というところまで突き詰められたものではないと思うんですけど、やはりそれを意識していないと。無視するわけにはいかないですよね。お客様の心にあるものとリンクするものを作ること、演じる側と観る側に共感を作らないと、こうした芝居をやる意味はないのかなとは思います。

――今回はオールメール作品となりました。皇太后やコンスタンスも全員男性俳優が演じられますが、どのような意図がありましたか?

 先ほどお話したように、キャスティングした2020年当初は、ちょっとデフォルメした寓話的なものにしたい思いがあったので、そうすると少し現実から離れてもいいんじゃないかなと思いました。そのために、男性が女性をやったほうが、昔のシェイクスピアがそうであったように、エンターテイメントになるのではないかと思ったんです。男性が女性を演じるという面白さも含まれるエンターテイメントになるのではないかと思って、女性役を男性俳優にやってもらうことになりました。

――今日で稽古に入られて数日。現時点で「こんな面白いものに仕上がりそうだ!」という予感はありますか? 今の手ごたえはいかがでしょうか。

 もうね…面白いですよ! 本読みをやっている時点では、「ええっ、こんなに面白いの!?この芝居は」と、出演者みんなが言ってました。…本当だよ(笑)

 立ち稽古に入った今は、本当に大変です。とにかく全5幕のうち1幕は、たくさんの人が出てきて、それぞれが自分の言いたいことを言い合う。そして2幕ではフランス軍とイギリス軍が言い合って、そこに市民が出てきて市民とフランス軍が言い合って、市民とイギリス軍が言い合って、戦争になっていくというシーンなんです。

 同じ場所でそれらが繰り広げられることもあり、スペクタクル的な面白さを作っていかないと絶対に飽きられるなと思っているので、今一生懸命作っています。ちゃんとできればかなり面白いと思いますし、ワクワクドキドキする前半になるのではないか、と思っていますね。

2022.12.19(月)
文=赤山恭子
写真=松本輝一
ヘアメイク=吉田美幸
スタイリスト=尾関寛子