ミドルエイジになっても進化し続ける登場人物たち

よしひろ 登場人物たちは「SATC」の頃から着実に年を重ねてきているわけですが、お二人は年齢というものをどう感じていますか?

LiLiCo みんなよく「年はとりたくない!」って言っているし、主人のお母さんとかも誕生日に「おめでとう」って言うとイヤがりますけど、人だろうが動物だろうが、それこそ樹木だろうが年をとるわけだから、私はそれを拒むのは逆にカッコ悪いと思うんですよ。やっぱり、年をとると知恵がつくでしょう。悩みごとは若い時と同じ数あると思うけど、年をとれば解決方法を知っているので、悩む時間が短い。

村上 あぁ、知恵ですよね。

LiLiCo だって25歳のときに悩んでた恋は、終わってから3日ぐらい寝込んでいたけど、結婚する前の彼氏と別れたときは、悩んだのは30秒ぐらいだもの(笑)。合わなかったんならしょうがない! ってね。

村上 20代の私の目標は、まわりの輝いている30代の女性の皆さんなんです。何でみんなこんなに輝いているんだろう? って考えた時に、きっと20代でいろんなことにチャレンジして、失敗して学んでいるからなんじゃないかって。だから、「SATC」と「AJLT」は、私がその年になった時にこうなっていたいなっていう理想なんですよね! 彼女たちの失敗も含めて教科書みたいなものだなって思います。

LiLiCo そうよそうよ! それにアナログな人だったキャリーがインスタを使いこなしたり、ポッドキャストに出演してたり、時代に合わせてすごく進化してましたよね。

よしひろ すごいですよ、だって映画版ではガラケーを海に投げたり、アシスタントのスマホ見て「使い方わかんない」って言ってましたもんね。

LiLiCo スマホの持ち方も分からなかったもんね。「SATC」の時代と比べて変化したというのも勿論だけど、今作でのキャリーはポッドキャストへの出演を通して更に進化していく。そこがまた面白かったですね。同じところで足踏みしてたら壁にはぶつからない。壁にぶつかって、そのたびに「よし!」と乗り越えていくことをキャリーたちは25年もやっているわけだから(笑)、その姿が「壁にぶつかっても間違ってもいいんだ」と私たちに思わせてくれるんじゃないかな。

村上 もうLiLiCoさんに「AJLT」出てほしい~!

SATCシリーズをきっかけに広まった「ゲイ・ベストフレンド」という言葉

よしひろ 今でこそLGBTQ+ってよく言われるようになりましたが、「SATC」はその先駆けだったんですよね。スタンフォードとアンソニーのようなゲイの人々が普通にキャストとして出てくるわけですから。フィギュアスケートの世界では、割とカミングアウトをしている人が多いような気がするのですが、村上さん、どうでしょう?

村上 確かに海外の選手は特に多いですね。ジョニー・ウィアー選手とかは表現力も衣装も本当にステキで、いつも参考にさせてもらっていました。私が世界ジュニアで優勝したときの「白鳥の湖」は、ジョニーが羽根をよく使っているからマネして衣装につけたんです(笑)。

LiLiCo LGBTQ+は私にとってあまりに普通のことなんだけど、当時のテレビシリーズとしては珍しかったかもしれないですね。スタンフォードとアンソニーみたいな二人がメインキャストとして出てくるっていうのは。

よしひろ 「SATC」があったから、女性がゲイの男性を親友に持つっていう「ゲイ・ベストフレンド」が一般に広まったというところはありますね。

2022.11.02(水)
文=張替裕子
撮影=末永裕樹