人に言えない心の闇に、光を当てた作品

――演じる井上さんは、苦しくなかったですか? 

 親を好きになれないことの苦しさは夕子を通して感じていました。物語の終盤、ある出来事に対して夕子は妹の晶子とは違う反応を見せるのですが「自分が間違っているんだ」と責めてしまう。そういう思いを積み重ねてきたのかと思うと辛かったですね。

――杉田真一監督の演出はいかがでしたか?

 もともと脚本に説明的な台詞は少なかったのですが、監督は「この台詞は伝わるからカットしましょう」と、どんどん現場で排除していましたね。

――演じることの原点に立ち戻る作品と位置づけているそうですが、その意味は?

 人は、何か抱えていても全てを見せるわけではないし、言葉にしない事もある。そんなところにふと光を当てられるのが映画なのかな。この映画も、台詞で気持ちを表現しない分、違う自分になるのではなく、私の中にある夕子を見つけようと。役と向き合うことは自分自身と向き合うことだと感じた作品でした。

――母親は、夕子と対照的な明るいキャラクターです。演じた石田えりさんもパワフルでした。

 監督が粘って何度もテイクを重ねたシーンでは、「もう分かんなくなっちゃった!」と仰って(笑)。脚本はもっと分かりやすくお母さんの嫌味や仕草が書かれていましたが、えりさんは悪気なく良いお母さんを演じていたので、夕子にとって、苦しい気持ちはより深くなったような気がします。

2022.11.11(金)
文=松山 梢
撮影=平松市聖
ヘアメイク=AYA(TRIVAL)
スタイリスト=伊藤信子