「お芝居にも、人を笑わせて楽しませる力があるんだ!」

――そこで声を使った表現に出会ったのですね。

 まだその時点では「声優もひとつの選択肢としてあるのかな」という意識だったのですが、自分の声をつかって芝居をするうちに「お芝居にも、お笑いと同じように人を笑わせる力や、楽しませる力があるんだ」と感じるようになりました。もちろん芸人への憧れはずっと変わらずにあったのですが、お芝居をやってみたいという気持ちが少しずつ大きくなっていったんです。

 そんな中で、ありがたいことに「アニストテレス」で特別賞をいただきました。今の事務所に所属させてもらえることになったとき、自分のなかで決心がついたというか。いただいた機会には有難く、全力で向き合って頑張ろうと決めて、声優の道を選びました。

――声優のキャリアをスタートして5年目で、「チェンソーマン」の主演声優を射止めました。別の道を志していたからこそ、戸谷さんは声を使った表現の面白さはどこにあると思いますか?

 この仕事をさせていただく前は、「声優って“いろんな声”を出す仕事なんだな」と思っていたんです。

 でも、声優の本質は「声」ではないのかも。多彩な声を使えるようになりたいとはもちろん思うのですが、創作物としての世界を本物にする、現実にあるように見せることが、声優の仕事なのかなと最近よく考えるんです。自分の声にこだわって演じるというより、その世界が実際に自分の目の前に広がっていて、自分がその世界に“居て”、はじめて声のお芝居になる。そこがすごく面白いなと思っています。

――現在23歳の戸谷さん。最後に、これからどんな声優になりたいか教えてください。

 「チェンソーマン」もそうですが、現実ではできないことをリアルに落とし込むような役をやってみたいですね。空を飛んだり、魔法を出したり。空を飛んでるときの声ってどんな感じなんだろう? 風の流れがあるから声は出せないのかな? やってみたい役はたくさんあるけれど、まずは、現場にいるだけでその場の空気が明るくなるような声優になれたら、嬉しいです。

戸谷菊之介(とや・きくのすけ)

1998年11月30日生まれ。東京都出身。2017年10月、ソニー・ミュージックアーティスツ主催の声優オーディション「第6回アニストテレス」で特別賞を受賞。2022年、テレビアニメ「チェンソーマン」のデンジ役で初主演。特技はジャズピアノ、トロンボーン。

TVアニメ『チェンソーマン』
テレビ東京系で10月11日24時より放送開始

戸谷菊之介 井澤詩織 楠木ともり 坂田将吾 ファイルーズあい 伊瀬茉莉也 高橋花林 八代 拓 津田健次郎

原作:藤本タツキ(集英社「少年ジャンプ+」連載)
監督:中山 竜
脚本:瀬古浩司
音楽:牛尾憲輔
オープニングテーマ:米津玄師「KICK BACK」
https://chainsawman.dog/

2022.10.08(土)
文=CREA編集部
撮影=今井知佑