「デンジの声は、抑揚も含めてそのまんま僕の声」

――デンジとして初めてアフレコに臨んだときはいかがでしたか?

 めちゃくちゃ緊張しました。前日の夜も台本がボロボロになるくらい読み込んで……。でも監督もほかの声優のみなさんも本当に優しかったのでなんとか乗り切れました。先輩方にお芝居のことをいろいろ聞けたし、待機の時間もフランクに話すことができて、お陰でだんだん落ち着くことができました。

――戸谷さんの声がこれから「デンジの声」として、たくさんの視聴者に届きますね。声の役作りはどんなことをされたのでしょうか。

 実は声の作り込みはほとんどしていないんです。デンジの声は、抑揚も含めてそのまんま戸谷菊之介の声です。監督からも「そのままの声でやろう」という指示があって。

 大きなことを言ってしまうかもしれませんが、デンジ役に選んでいただいたからにはまず自信を持つことが大事だと思っているんです。オーディションのときには「こういう声かな」、「こんな発声をしてみようかな」といろいろ考えたりしていたのですが、迷ったときには「自分の声=デンジの声なんだ」という自負を忘れないようにして、まっさらな声で演じるようにしています。

 僕の声がどんな風にみなさんに届くのか……緊張しますね。

声優になるきっかけとなった「アニストテレス」特別賞

――「戸谷デンジ」が生まれて間もないですが、いまはどんな日々を過ごしていますか?

 いまは週休2日ぐらいで、5日間はチェンソーマンのアフレコや取材などをしています。休みの日は、配役発表後に声をかけてくれた友人や先輩と食事に行ったり、トロンボーンの練習をしたり。本当に最近の話でいうと、霜降り明星・粗品さんの YouTubeチャンネルにハマっています(笑)。

――そもそも、声優になったきっかけとは?

 実は、僕はずっとお笑い芸人になりたかったんです。中学生のときバカリズムさんをテレビで見て大好きになって、「僕も人を笑わせて楽しませる芸人になりたい!」と思うようになりました。

――声優を最初から志していたわけではなかったと。

 はい。高校生では文化祭でコントや漫才を作って披露していたから、まわりの友達からも「あいつは芸人になりたいんだ」と認知されていて(笑)。僕自身、中学から高校を卒業するまでお笑いの道に進むつもりでした。

――しかし2017年、18歳のときにソニー・ミュージックアーティスツが主催する、年齢・性別・国籍不問の声優オーディション「アニストテレス」で特別賞を受賞し、声優としてのキャリアがスタートしました。戸谷さんのなかでどんな変化があったのでしょうか?

 高校を卒業したあと、すぐに養成所に入ろうとしたわけではなく、いろいろなオーディションを幅広く受けていました。お笑い芸人の事務所はもちろん、芝居なども幅広く。まずは「表現」そのものを勉強してみたいと思ったんです。

 僕はデンジと一緒で、好奇心の動くほうになんでもチャレンジしてみるタイプなので、もともとアニメが大好きだったこともあり「アニストテレス」にも応募したんです。

2022.10.08(土)
文=CREA編集部
撮影=今井知佑