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素敵な楽曲と根底にあるテーマを伝えたい

 三浦さんも“大好き”と語るミュージカル『ヘアスプレー』の楽曲はキャッチーで、それぞれに魅力があるものばかり。一番好きな曲と聞かれたら、どの曲を選ぶのだろうか?

 「どれも最高だから難しい! あえていうならば『ウィズアウト・ラブ』でしょうか。主人公のトレイシーと友人たち4人で最後に声が重なっていくところが素敵な曲ですよね。あの曲を歌わせていただけるのも幸せなことだと思います。映画でこの曲を歌っているザック・エフロンがすごく格好いい! 

 この役を演じる上で絶対に逃してはいけないと思うのは、トレイシーを含め全米の女子たちが憧れているスター、リンク・ラーキーであること。今回劇場にいらっしゃるお客さんもザック・エフロンをイメージしていらっしゃると思いますし、番組に出演しているときのあの隙のない格好良さというものをしっかり外さずに表現しなければならないと思います。

 そこを除けば、結構普通のどうしようもない男の子の面が多々あって、それがトレイシーと出会ってリンクの世界が広がっていく。本人も台詞でそう言っていますが、初めはトレイシーがリンクに憧れていたのが、いつしかリンクがトレイシーに引っ張っていって貰っているんです。

 テレビスターとしての面と普通の高校生の面の違いが、演じ甲斐のある面白いところだと思います。渡辺直美さんが演じるトレイシーに引っ張っていただくところも大切に演じたいですね。

 そしてこの作品の根底には、人種や容姿などへの差別という普遍的で深いテーマが描かれているので、それを大切にしたいと思います。時代背景は1960年代ですが、今も戦争が起こっている地域があるように、問題は解決することなく時を経ても何ら変わっていないんです。そういう意味でもこの作品は受け継がれていくべきだと思いますが、将来にこの作品を観た方が“こんなこともあったのね”というような時代になってほしいですね。

 台詞も日本語に翻訳して演じますから、映画で観たときよりもドキッとするようなきつい表現もあると思います。曲がポップなのでライトな気持ちで観られるのですが、台本で日本語の台詞を観た時に改めてその扱っている内容の重さというものを感じました。日本人は直面する機会が少ないかもしれませんが、作品に描かれているテーマについてもっと勉強して、日本で上演する意味やテーマを伝える意味などは大事にしたいです」

プライベートタイムでの楽しみとは?

 すごい勢いで次々と話題作に出演している三浦さんだが、現在は23歳。そんな彼が自分らしく過ごせる時間とは?

「友達と野球をしている時が結構リフレッシュできます。なかなかその時間を作ることは難しいんですが、予定が合うとキャッチボールをしたり、バッドを持って何人か人数が集まれば河川敷に行って野球をしたりします。時間帯が夜になったときはバッティングセンターに行くこともあります。僕は野球が大好きで、それは本当に趣味の時間ですね。ジャイアンツのファンクラブにも入っているので、時間があれば試合を観に行きます!」

 爽やかな日本版のリンクがダンスと歌唱で魅了してくれるのが、楽しみだ。

» スターダムを駆け上がる舞台俳優・三浦宏規の“人生の転機”とは?【前篇】を見る

三浦宏規(みうら・ひろき)

1999年、三重県出身。5歳でクラシックバレエを始め、数々のバレエコンクールで入賞を果たす。最近の出演作にミュージカル『レ・ミゼラブル』や舞台『千と千尋の神隠し』など。2023年には、舞台『キングダム』で主役の信を演じる。

ミュージカル『ヘアスプレー』

1988年の映画『ヘアスプレー』(ジョン・ウォーターズ監督)をもとに、2002年にブロードウェイで開幕、トニー賞8部門を受賞。世界中で大ヒットした人気作を日本キャストで初上演。2022年9月17日(土)~、東京・東京建物 Brillia HALLを皮切りに、福岡、大阪、愛知の4大都市にて上演。
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2022.09.17(土)
文=山下シオン
撮影=鈴木七絵
ヘアメイク=丸山晃穂(JYUNESU)
スタイリング=小田優士