役作りの温度を低く保つことで生まれた距離感
――松田さんは、ずっと長野に行きっぱなしだったんですか?
そうですね、最初から最後までいましたね。山奥だったし、ホテルから撮影現場がちょっと遠いのもあって。
――逆に言うと、そうしてずっと同じ場所にスタッフ・キャストといると、結束力が高まったりもしませんでしたか?
あー……もちろん、撮影を進める上ではあったと思いますけど、やっぱり僕は……東京から来たよそ者の役だったから(笑)。そういう気持ちをずっと持ちながら現場にいたような気がします。村の皆さんは結束力あったと思います(笑)。
――撮影中も、撮影が終わってからも松田さんはアウトサイダー的な立ち位置を貫いていたと。
台本を読んだ時に、孤立した村で唯一の医者という設定だったので、村の皆から頼られ、信頼を勝ち取る役として演じることも出来たのかもしれないですけど、僕の岩森のイメージは行方不明の奥さんを見つけることで岩森が、自分自身を見つけようとしてるんじゃないかと思って。だからそれ以外のところに関しては温度を低く保っていたように思います。それが結果的に村の人との距離感に繋がれば良いなと思いました。理解することが出来ないしきたりだったり村の人同士のいざこざに関わりたくない気持ちを持つことが岩森のキャラクターに繋がるんじゃないかと。
――松田さん自身の気分転換はうまくできたんでしょうか?
撮影のはじめはずっとホテルに籠ってましたね。役のこともあって、鬱々した感じで……。ごはんを外に食べに行くのも億劫で、毎日コンビニでおでんとおにぎりを買って食べてました(笑)。撮影の後半は少し余裕が出てきたので、スタッフお薦めのお店を教えてもらって。せっかくのロケだし、今考えると勿体なかったですね(笑)。
2022.08.23(火)
文=赤山恭子
撮影=平松市聖
ヘアメイク=須賀元子
スタイリング=カワサキタカフミ