現在39歳。求められる役の変化と自身の変化

――本作の岩森しかり、『散歩する侵略者』の加瀬真治、『影裏』の日浅典博のような底の知れない役が松田さんにハマると感じる一方で、「獣になれない私たち」の根元恒星、「大豆田とわ子と三人の元夫」の田中八作などのひょうひょうとしたヤサ男も似合います。非常に幅の広い役者さんですが、ご自身の演じ手としての強みをどう分析しますか?

 んー、いや……わからないというか、あまり考えたことがないですね。ただ、年齢的にも今39歳で来年40歳なので、年相応というか、(求められる)役もどんどん変わっていくじゃないですか。

 そうやって年齢とともに自分が演じるべき役だったり、いただく仕事は変わってくるから、それに対して自分がどういうアプローチができるのか、という想像はしますね。

――30代を振り返ってみてどうですか? プライベートでも、仕事でも。

 30代は、よく遊んだなぁと思います。いろいろ遊んできたけど、コロナ禍になって、当たり前だった日々ががらっと変わってしまって。逆に今はそっちが日常になっているから「元の生活に戻っていいよ」と言われても「困ったなあ」という感じ……というのが30代で今に至る感じですかね。

 制限なく、自分の気持ちの思うがままに、そういう感覚を大事にして生きてきたけど、こうして制限がいろいろ設けられる中で気づくことはたくさんあったな、と。30代の最後にそれが集約されていたんですよね。

 なんとなくですが、女性は男より早くにいろいろな意識の改革が起きますよね。男は割といくつになっても子どもみたいなところがあって、まあ、もちろん人によりますけど。なかなか自分の肉体や自分の立場だったり、いろいろなものをかみしめることが出来ていないんですよね。僕の場合は役を演じることでダイレクトにそれが表れると思うから、より身体と心のバランスを楽しんでやっていきたいですね。

松田龍平(まつだ・りゅうへい)

1983年5月9日生まれ、東京都出身。1999年に映画『御法度』でデビュー。最近の出演作に映画『影裏』、『ゾッキ』、ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」、舞台「近松心中物語」など。

「連続ドラマW 鵜頭川村事件」

2022年8月28日(日)午後10時よりWOWOWにて放送・配信開始(全6話)

日本の片隅にある鵜頭川(うずかわ)という名の村。行方不明の妻を捜す医師・岩森(松田龍平)は娘を連れて妻の故郷の村を訪れるが、村は集中豪雨による土砂崩れで孤立。不安が渦巻く中、殺人事件が発生し、村人たちは暴徒化していき……。村に根深く残る因習や権力闘争に巻き込まれながら、岩森は妻の行方に繋がる新事実にも辿り着くのだが―― 。果たして、岩森は娘と共に妻を連れてこの村から無事に帰ることができるのか。

出演:松田龍平
蓮佛美沙子 工藤阿須加 山田杏奈 / 板橋駿谷 冨手麻妙 吉岡睦雄 和田光沙 宇佐卓真 /
眞島秀和 綾田俊樹 / 荒川良々 ・ 伊武雅刀 ほか
原作:櫛木理宇『鵜頭川村事件』(文春文庫刊)
脚本:和田清人
監督:入江悠
音楽:池永正二(あらかじめ決められた恋人たちへ)

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2022.08.23(火)
文=赤山恭子
撮影=平松市聖
ヘアメイク=須賀元子
スタイリング=カワサキタカフミ