東京で生きていて感じる「それぞれの責任」

――岩森は鵜頭川村の「よそ者」として登場しますが、演じる上でよそ者としての意識などは、どう考えていましたか?

 何となくですが、みんな顔見知りというのは安心感はありますよね。逆に、問題を起こす人が1人いるだけで、影響も大きいだろうし。よそ者に厳しい目が向けらるようなこともあるのかもしれない。ただ、このドラマで、村が二つの勢力に分かれてしまったように、結束力が強いことがかえって対立した時に、より大きな歪みを生むのかもしれないです。大きい町での人同士の距離感とは大きく違いますよね。

 今回の「連続ドラマW 鵜頭川村事件」では昔から「エイキチ」という神様を信じ崇めているんです。エイキチの怒りを納めるための異様な儀式が行われているのですが、東京からきた岩森が、客観的に、なぜその神様を崇めてるのか問うことによって、時間が止まっていた村に新しい風が吹いたように思いました。

――東京生まれ、育ちの松田さんにとっては今作に出演することで、改めて狭いコミュニティで過ごすことの心地よさ、反対に窮屈さなども感じるきっかけになったんでしょうか。

 僕は生まれた時から東京なので、想像でしかないですけど、(都会は)人との繋がりも人口の少ない村のような暮らしと比べると薄くなるだろうし、「それぞれの責任」というところが強いのかもしれないですね。

 そういう意味では、僕自身、気の合った友達や家族と小さいコミュニティで信頼しあって生きていくということに憧れみたいなものはあります。コロナ禍で生活が変わって、生活の求め方みたいなものを改めて考えるきっかけになったのもありますけど。ただ、その分、それぞれという考え方より不幸も平等に共有するわけだから、つながりがある中で場を乱す人が出たときに、絶対的な掟やルールが必要になるのかもしれないですね。

 そういうことが、今回の、鵜頭川村のしきたりや祟りのように、輪が乱れないようにコントロールする“何か”が生まれるきっかけになるかもしれないですよね。悪いことが起きたのを祟りのせいにすることによって、一体感を高めて村を統治するという意味もあるのかも。外から来た人の目線から見ると違和感のある風習かもしれないけど、紐解いていくとその土地に合った考え方で、必要なことだったりするのは想像すると面白いです。

 そう考えると、鵜頭川村の人たちの暮らしだったり、ちょっと生々しさが出てきますよね。

2022.08.23(火)
文=赤山恭子
撮影=平松市聖
ヘアメイク=須賀元子
スタイリング=カワサキタカフミ