閉鎖的な村と、都会。最新出演作の役柄をきっかけに考えた「生き方の距離感」

 ちょっと不思議な人、つかみどころのない男、ただの二枚目ではないやつ――そんな役柄を演じさせたら、彼の右に出る者はいないだろう。画面にいるとどうしても目で追ってしまう俳優・松田龍平さんは、ドラマから映画・舞台など、ボーダレスに活躍している。

 「まだ見ぬ松田龍平を見てみたい」という期待は視聴者のみならず、製作陣も思うところのはず。その証拠に、熱いオファーは引きも切らない。

 最新主演作「連続ドラマW 鵜頭川村事件」は、松田さんが11年ぶりに入江悠監督とタッグを組んだWOWOW初のパニック・スリラー作品。本作で、松田さんは失踪した妻を捜しに、妻の故郷である村に訪れる医師の岩森を演じた。

 都市部から取り残された者たちが鬱憤を溜める閉鎖的な村は、豪雨による土砂崩れで文字通り孤立してしまう。一触即発状態の村人たちのコミュニティに岩森は巻き込まれていき、全員が極限状態に追い込まれる。

 思わず背筋が凍ってしまうような“ある、かもしれない”と思わせられる本ドラマ、世界観にどっぷりと浸った松田さんに撮影中のエピソードや想いを聞いた。さらには、来年40歳という節目の年を迎える松田さん。30代のうちの変化も、インタビューで語ってもらった。

役が追い詰められると自分のなかにも同じ感情が芽生える

――「連続ドラマW 鵜頭川村事件」では『同期』以来、11年ぶり2度目となる入江監督の現場になりました。いかがでしたか?

 久しぶりの入江組、楽しかったです。今作では行方不明になった奥さんを村に捜しに行く岩森という主人公を演じました。村に着くなり自然災害で村が閉ざされてしまい、連続殺人や祟りなど、いろんな事件に巻き込まれていくんですが、その中で彼自身の問題が段々見えてくるという話で。入江さんとは細かいところも含め、気になったことを全部ぶつけさせてもらいました。

 全6話、全て長野の山奥で撮影で。わりと寒い時期だったのもあって、体力的にキツかったですね(笑)。祭りのシーンだったり、大きな立ち回りも多かったですし、次から次へと事件が起きるので、盛りだくさんになっています。早いうちに災害で村が孤立してしまうので、終始追い詰められていて、皆んなずっと疲れ切った芝居をしてましたね。

――追い詰められていく感じの物語でもありますし、余計ですね。

 そうですね。撮影も毎日、ホテルと山の往復といった感じで、休みもわりと1人で過ごしていたので、どこか、自分の中にもそんな感情が芽生えてくる感覚がありました。実際、アクションシーンがあったり、盛りだくさんだったので「大変だったなぁ」という記憶があります。

2022.08.23(火)
文=赤山恭子
撮影=平松市聖
ヘアメイク=須賀元子
スタイリング=カワサキタカフミ