パン屋で“買い占め事件”も起きていた?

――共演者の皆さん、特に弥生交響楽団のメンバーは個性が強いですよね。

 弥生交響楽団のメンバーひとり、ひとり、本当に個性が強いです(笑)。作品の中でも、クスクスポイントが多いところだと思います。

――ベテランの俳優勢がたくさんいらっしゃる中、町田啓太さんと森マリアさんという若者メンバーのフレッシュさも印象に残りました。ご一緒してみていかがでしたか?

 おふたりとも、私は今回「はじめまして」だったんです。啓太くんは出で立ちからしてスッとした、かっこいい爽やかな感じの印象を持っていました。ですけど、お芝居になるとすごく軽やかにユーモアに溢れていて、「わぁ、素敵な役者さんだな」とすごく感じました。まさかそうしたユーモアを滲ませつつ、サラッとやられると思っていなかったので、ちょっとびっくりしたくらいです。

 マリアちゃんは、とにかく現場では明るくて、いつも笑顔でいてくれて。きっと緊張していたと思うんですけれど、まっすぐいろいろなものを吸収するぞ、という気持ちに溢れていました。マリアちゃんがあかりちゃんで、本当に本当に良かったと思います。

――作品のことをお話されているとき、檀さんはずっと笑顔ですよね。本当に現場が楽しく、豊かな経験だったのかなと伝わります。

 そうなんです! 共演者もスタッフも皆、水谷監督の作る『太陽とボレロ』が大好きで、現場が大好きで……。クランクアップが近づくにつれて「終わりたくない! まだやっていたい!」という声が、あちらこちらから聞こえてくるくらいで。

 私としても「主演だから」とかは関係なく、皆の演奏をちゃんと見守りたい気持ちになってしまって。それは檀れいとしてなのか、オーナーの花村理子としてなのかも、よく分からないくらいの気持ちでした。とにかく「この現場を離れたくない」という思いでしたし、差し入れもいっぱい用意させてもらいました……(笑)。

――例えば、どのようなものを? 気になります。

 ちょっとした時に食べられそうなパン、甘いもの、お煎餅っぽいもの……とにかくありとあらゆるものを用意しました。もうパン屋さんの焼きたてのパン、全部買い占めるぐらいの勢いでした(笑)。演奏のシーンだと、キャストやスタッフだけじゃなくてプロの演奏家の皆さんもいらっしゃって、とにかく人数が多いので大量にいろいろなものを買って行きましたね。すごくいい思い出です。

2022.06.03(金)
文=赤山恭子
撮影=佐藤亘
スタイリスト=髙橋正史(OTL)
ヘアメイク=黒田啓蔵